第10話 お金を稼いで
初夜を過ごした季人と千春、
仲良く手をつないで町を散策する。
が、お金がないことを思い出す。
阿久戸一家の全財産は69円。
家族らしく生きるにはお金を稼ぐ必要があった。
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「どうやって稼ぐ? 2人で物乞いでもする?」
「ダメダメ! カワイイ息子にそんなことさせられますかって。ママに任せなさい」
「任せるって……まさかエッチなお仕事するつもりじゃないよね?!」
(路地裏にいたころ、そんなお仕事をするお姉さんはちらほら見かけたんだ)
(ほとんど裸みたいな服を着て、おじさんと腕を組んで怪しいビルの中に入って……)
(ママも知らない男といっしょに……)
「やだやだやだやだぁーーーっ! ママは僕のものなのぉ! 誰にも触れさせないんだからぁ!」
「まぁっ♡ 安心して、ママは季人ちゃんだけのものよ。ぜ~~~ったいに他の男なんかに振り向かないから、約束する」
「ホント? 絶対だよ?」
「モチのロン。もし寄ってきたら雷で消し炭にしちゃうんだから♡ 季人ちゃんこそママ以外の女に騙されないでね? もし季人ちゃんがママを捨て、捨ててぇ、他の女を好きに、なっ、たたたたっ、らぁぁぁ?…………あぁ、あああああああああーーーっ?! ありえないっ、ママを愛さない息子なんているはずがないのにっ?! そんな世界、あってはならないからぁっ! 壊してやるっ、地球もろとも全部全部ブッ壊してやるぁぁぁーーーっ!」
「想像だけで情緒壊さないで~僕も絶対ないから大丈夫~」
「コホン、話を戻しましょうか。お金を稼ぐのよ」
「真面目に働く? 僕どんくさいけど簡単なバイトならできるよ」
「ダメダメ! カワイイ息子にそんなことさせられますかって。永久ニートでいいんだから。かといってママも働かないわ。季人ちゃんとずっといっしょにいたいもの♡」
「物乞いも売春も労働も無し? それでどうやって稼ぐの?」
「フッフッフッ……あるじゃない、もっとシンプルでバイオレンスな方法が」
「つまり?」
「パパッとお手軽盗んで解決! 強盗し〜ましょ!」
「わ~い非道徳的〜!」
「当分家族らしい生活をするにはいくら盗めばいいかしら?」
「家族らしい生活でしょ? お洋服買ってお家買って、ご飯も食べなきゃいけないかし……結構必要だよね」
「5億円あれば足りそう?」
「十ニ分過ぎるかも〜」
「じゃあ目標金額5億円で。そうと決まれば悪は急げ、銀行にいきましょ!」
「テンポ早いよ〜ちゃんと強盗できるの?」
「モチのロン、魔法の力でちょちょいのちょいよ。まぁ見てなさいって」