第1話 はじめての召喚
「えぇーーーっ?! ホントに悪魔さん来ちゃったぁ!」
「ようやく見つけましたわ、運命のご主人様♡ この度はご召喚に預かりまして幸甚の極みにございます〜♡」
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阿久戸季人は物乞いの孤児。
町の片隅でゴミを漁って生きてきた。
路上で1人寂しく凍える日々。
誰かに助けてほしかった。
でも周りの人間はみんな見て見ぬふりをする。
だからムシャクシャしてヤッてやった。
漫画やアニメでよくあるアレ。
満月の夜、悪魔召喚の儀式。
人間がダメなら悪魔を頼ればいいじゃない。
魔法陣を描いて呪文を唱えて、
『悪魔さんおいでませ〜』なんてやってみた。
もちろんほんの冗談、暇潰し。
そしたらズドン、と雷が落ちてきた。
いっしょに落ちてきたのは大きなお姉さん。
立派な角と翼と尻尾、緋色の髪と真紅の瞳。
穴空き水着みたいなスカスカピチピチの格好。
季人と悪魔、初めての出会いだった。
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「コホン、改めまして。ワタクシは『スプリングス=サディ=ハルナバル』と申します。以後お見知り置きを」
「僕は阿久戸季人だよ。よろしくね」
「『リヒト』、なんと甘美な響きでしょう♡ 季人様、あぁ季人様〜♡」
「おおげさだなぁ。で、本物の悪魔さんなの? えっちぃコスプレお姉さんじゃなくて?」
「ムムッ、失敬な。正真正銘あくまで悪魔ですとも。立派な角が生えてますし、翼も羽ばたいてますし、尻尾もフワリフワリと動いていますでしょう?」
「作り物には見えないね。やっぱり本物? でもそれだけじゃなぁ」
「だったら魔法をごらんになります? 男の子はそういうのがお好きでしょ?」
「魔法?! 見たい見た〜い!」
「素直でよろしい♡ それではワタクシにしっかりつかまってくださいな」
「こう?」
「そうそう、腰をしっかり引き寄せて♡ 早速お空に参りましょう、それっ!」
「びっえぇぇぇーーーっ?!」
瞬く間に空高く舞い上がった。
「もうこんな高くまで来ましたよ〜人間どもが蟻ん子より小さい、滑稽ですね〜」
「ぎゃあぁぁぁーーーっ! 高いよぉ怖いよぉ! 下ろして下ろしてぇ!」
「あらら、パニックになってらっしゃる。落ちついてくださいな、よしよし、よしよし♡」
「あふゅう……頭なでなでキモチイイ……」
「赤ちゃんみたいでいいですね〜♡ ワタクシにつかまってれば大丈夫ですからね」
「うん。で、こんな高いところで何するの?」
「魔法でこの町を消して差し上げましょう。悪魔の妙技、とくとごらんあれ」
「え? なんて?」
「人世一夜に一見殺……我は暗雲『天砕』……堕治を貪るこの世の悪に、天理を割いて極荊を与えん……」
「どんどんお空が真っ暗に……雷がゴロゴロ言ってる……」
「我らが主従の門出なるぞ、その餞に散るがいい」
【雷光】