暗闇を照らす炎
その時、世界が暗転した。
気がつくと、周囲は深淵の闇に浸されていた。
その世界で、神々しい輝きを放つ女性が一人。
エリセルだ。
鬼瓦の影から、エリセルが浮かび上がっている。
「アリエル。決着をつけようじゃないか。私達の、長い、長い因縁に」
アリエルは唇の片端を持ち上げた。
黒猫の姿から人間の姿に戻り、炎のドレスを纏う。
「堕天使が介入してくるならそれは天使の出番にゃ。最早正体を隠す必要はない」
「あんた、アリエル……天使?」
遥が混乱したように目を白黒させる。
しかし、すぐに真顔になって鬼瓦に視線を向けて鉄パイプを構え直した。
「炎、炎、炎、炎一辺倒。本当に鬱陶しい……」
エリセルが微笑んで言う。
「私はあんたとちがって不器用だからにゃあ。一芸を磨くしかなかった。それが神格と認められるに至った」
一瞬でエリセルの形相が変わった。
「五月蝿い!」
氷、炎、木、風の幾百の矢がアリエルと遥を襲う。
それを、アリエルは炎の壁で打ち消した。
「炎なら誰にも負けない。お姉ちゃんにだって」
そう、アリエルは堂々と言い放った。
遥は呆然としつつも、突進してくる鬼瓦に向かって鉄パイプを握りしめた。
続く




