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退魔師岳志

「今、外界には悪霊が跋扈しています」


「悪霊?」


 俺の問いに、天女は頷いた。


「人間が生み出した負の感情の塊。放置しておけば感情を歪め、不幸を振りまく。それを放置しておくことは出来ません」


「じゃあ、貴女達が退治してくれればいいじゃないですか」


「私達天界人は、人間界の理にそうそう介入できないのです。仲介できる人材が必要です」


 嫌な予感がした。


「もしかして、俺にそれをしろって言ってるんじゃないよな?」


 天女はたおやかに微笑んだ。


「言ってます」


 怯むことなく言いやがった。


「悪霊が取り憑いた人間は不幸を振りまきます。貴方も、そんな不幸を少しでも減らせるかもしれませんよ」


 俺は黙り込む。

 ドロップ・アウトした俺が世間の助けになるならそれは良いことだと正直思う。

 しかし、手間が面倒くさい。


「ナビを付けましょう。アリエル。来なさい」


「はい、ご主人」


 そう言って出てきたのは、全身黒服の、スタイルの良い女性だった。

 ウェストも足も細く、背も高い。

 髪の毛は三つ編みにして、丸い眼鏡をかけている。


「この人間の手伝いをしておあげなさい。成果を上げるまでは帰ってこなくてよろしい」


「はあい」


「ヒョウン」


「はい」


 次は、腰に剣を帯びた騎士が現れる。

 まだ若く、優男にも見えた。


「この少年、どう見ます」


「体幹と体の使い方は抜群でしたね。鍛えれば面白いことになるでしょう」


「なるほど」


 天女は頷く。

 そして、俺に向かって指を差し伸べた。

 俺のポケットのスマートフォンが僅かに熱を放つ。


「クーポンを書き換えておきました。クーポンは二つ。一つは、この迷宮へのクーポン。実力が足りないと思った時に修行しにくるのもいいでしょう。もう一つは、決闘のフィールドへのクーポン。悪霊との決戦の場に使ってください。では、今日はお疲れでしょう。そろそろ、元の世界に戻りましょう」


 目眩がした。

 世界が歪んでいく。

 なにが起きているんだ?


 そんな疑問を持つ間もなく、俺はコンビニのレジの前に戻ってきていた。


「四百五十六円になりまーす」


 先輩が歌うように言う。

 俺は泣きそうになった。

 日常に、帰ってこれた。


 ポケットから財布を取り出し、払う。

 そして、アイスを取り出し、食べる。

 美味しい。

 日常の味が、こんなに美味しかったとは。


「ちょっとちょっと、はしたないなあ」


 先輩が呆れたように言う。


「俺は今、日常に戻ってこれたことに猛烈に感激しているんです」


「そ、そうなんだ?」


 おかしいな。先輩はわかっていないんだろうか。あのクーポンの意味を。


「私にも一口頂戴ー」


 そう言って、口を挟んでくる者がいた。

 アリエルが、あれは夢じゃないぞとばかりに黒一色の服装でその場に両手をポケットに突っ込んで立っていた。



続く

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