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アリエルの正体
寝ていた俺は、びっしょりとした汗をかいて目を覚ました。
殺気、とでもいうのだろうか。
嫌な感覚がする。
見ると、アリエルが、シャドーウルフの大群に囲まれていた。
危ない! そう叫びかける。
シャドーウルフの一体が飛びかかり、それにつられたように他の数体も襲いかかる。
アリエルの細い三つ編みが浮き上がった。
「フレイムボルト!」
炎の雨があられのように降り注いでシャドーウルフの大群をあっという間に無に帰した。
俺は唖然として口をあんぐりとさせる。
アリエルは平然とした表情で座り込み、クッキングパパのオープニングソングをアカペラで歌い始める。
そして、俺と目を合わせて気まずげに口をつぐんだ。
「お前……」
俺は、やっとのことで口を開く。
「強いんじゃねーか!」
俺の声が迷宮中にこだました。
続く




