暗雲
俺は相手の腹部に肘打ちを叩き込む。
しかしそれは柔らかく受け止められ、次の瞬間蹴りでの反撃が来る。
後方へと回避して空中に壁を作り軌道を変えて再攻撃。
しかし、空中に壁を作るというこの初見殺しのフェイントを相手は避ける。
「君の義母は貴方とよほど訓練を積んだようだ。君の動きが、私には見える」
先生はしたり顔でそう言うと、俺の腹部に膝打ちを叩き込んだ。
空中に跳ね上げられる。
(ヤバい!)
空中に壁を作って上下逆に着地する。
そこに、相手の追撃が来た。
六階道流奥義、鉄破孔。
相手の体内に魔力を送り込み暴発させる技だ。
生身の肉体であれを食らってはヤバい。
咄嗟に退魔の長剣を作り出す。
そして、相手の肘に溜まった魔力を切った。
相手の肘が俺に突き刺さる。
しかし、鉄破孔に必要な魔力は既に切られているので、効果はなかった。
壁を蹴って空中に上がった相手を追撃する。
だが、受け止められる。
先が見えない。
手の内は全て知られている。
暗雲の中に俺はいた。
「帰ったらデートしようね」
愛の声が脳裏に響く。
(ああ、勿論だ)
俺は自分を奮い立たせた。
つづく




