解散
昨日投稿してなかったことに気付いて二話目投稿。
明日は必ずギシカの体に入った愛と春武のかけあいを書きます。
その日はそのまま解散となった。
喧嘩別れと言ったほうが正しい。
大人しいギシカと面倒見が良い愛が喧嘩になるのもレアケースだ。
それも、体が入れ替わるという特殊事態に巻き込まれているせいだが。
ギシカは愛の家に帰ると、ボロが出ないようにさっさと部屋に入った。
部屋の中を触るのも躊躇われるが、宿題を終わらせるために机周りは調べなければならない。
あらかた宿題を終えると、着替えの準備をする。
そこではたと困った。
寝間着がない。
「その、お母さん」
おずおずと、エイミーの部屋をノックする。
通い慣れた家だ。間取りぐらいは知っている。
エイミーは気さくな表情で出てきた。
「どうしたのー愛? 今日も可愛い顔ね。おやすみのキス?」
冗談だろうか。本気だろうか。どちらとも取れないのがエイミーの怖いところだ。
「寝間着、見当たらなくって」
エイミーはきょとんとした表情になった。
「あんたいつも裸で寝てるじゃない」
ぎょっとしたギシカだった。
その日は、まだ暖かいし肌着で寝ることにしたのだった。
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「じゃあ、料理を作り終えたから妾は部屋に戻るぞ」
そう言ってアウラはさっさと去っていく。
ぽつんと一人、愛はダイニングに残される。
出された簡素な料理を突きながら思う。
ギシカっていつもこんな生活してたんだ。
エイミーが五月蝿いぐらいの我が家の食卓とは真逆だ。
春武も大会が近いとかで練習で帰ってきていない。
ギシカの孤独。それを愛は初めて実感していた。
(かと言って、交代するつもりはないけどね)
心のなかでぼやいて、食事を進める。
恐ろしいぐらいに静寂だった。
いつになれば元に戻れるのだろう。
そんな不安が湧く。
恋人ができたばかりなのにこの災難。
どうしたものだろうか。
「ただいまー」
春武が帰ってきた。
ギシカなら、どうする?
役者志望の愛の腕が試されているのかもしれなかった。
つづく




