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助けて、春武

 クラスに転校生がやって来た。

 あの少年だ。

 穏やかな笑顔の彼を出迎えるギシカの胸中はざわついていた。


 愛のクラスでなかったのがせめてもの救いだ。

 愛には戦闘能力はないが自分にはある。

 もしもの際に時間稼ぎぐらいはできる。


 不思議なことに、臆病なギシカにしては勇気が湧いてきた。

 昨日、母に可愛がられたからだろうか。

 自分自身が収まるべき場所に収まったという感覚がある。


 今のギシカはメンタルの安定面からして今までで最強と言うことになるだろう。

 移動授業だ。

 ギシカは廊下に出る。


 そこを少年に呼び止められた。


「井上ギシカちゃん、だったかな?」


 彼はにこやかに言う。


「そうだけど?」


「不思議な波長だ。君、悪霊憑きでも霊力使いでもない。もしかして、人間でもないのかな?」


 ギシカはぎくりとした。

 自分はハーフデビル。しかしそれは陰陽連と政府の一部関係者しか知らないことだ。

 白を切って歩き出そうとする。


 その髪を引かれた。


「いたっ」


 思わず呻く。


「良いのかい? 僕が暴れれば被害が出るぜ。生徒達の内臓が飛び散るファンファーレだ」


 その光景を想像してぞっとする。

 血肉あふれる教室で佇み嬌笑する彼。

 それがありありとイメージできた。


 彼はなにを思ったか、ギシカの髪を自分の鼻に持っていった。


「いい匂いだ。君はさぞ可愛がられていると見える」


 怖気が走った。


(助けて、春武――!)


 こんな男との共同生活はまっぴらゴメンだった。



つづく



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