破滅砲
少女は、否定されて育った。
やることなすこと怒鳴られ、叱られ、自信もなく。
そんな状態ではいじめのターゲットにもなりやすく、内でも外でも否定された。
自殺未遂に追い込まれた少女に残ったのは、障害と、親からの偏見の目だった。
それを回復してくれたのが、霊力だった。
前世の記憶が蘇った時、少女は救われたと思った。
記憶の中の圭介は、いつも少女の味方で、王子様のようであったから。
けど、その圭介すら自分を裏切った。
少女を襲った絶望は破壊衝動へと変換された。
あるいはそれも悪霊憑きとやらの影響なのかもしれない。
混合力を高めていく。
それを掌と掌の間で練り始める。
球状にエネルギーの塊が出来上がる。
「はは、私でもできる。私でも壊せる。他者を、他者の人生を。壊されてばかりだった、私が!」
「俺の育ての親の台詞をお前に伝えるよ」
憎い恋敵が憐れむように言う。
「世の中の大多数の人間はあんたをなんとも思っていない」
少女の思考が一瞬止まる。
「だから、生きてさえいれば、味方になってくれる人間というのもそのうち現れる。現時点でやけっぱちになることなんて少しもないんだ」
少女の思考に躊躇いが生まれる。
エネルギーの塊がブレる。
「学校とか家庭とかそんな壁取っ払って、その外の世界に目を向けようぜ。少なくとも、俺も、愛も、あんたの味方だ」
そう言って、恋敵は手を差し伸べる。
少女は一瞬、どきりとした。
ブレが強まる。
しかし、次の瞬間脳裏に蘇ったのは裏切りの数々。
「貴方もどうせ最後には私を見捨てる! 圭介を返してよ!」
ブレがなくなる。
エネルギーは放たれた。
球状に、光のような速さで。
閃光のように長剣が走った。
エネルギーが真っ二つに割れ、名古屋ドームの壁を破壊して消える。
次の瞬間、恋敵は眼前にいた。
「正気に戻すぞ。一度話そう。皆で」
長剣が少女を切り下ろす。
そして、肉体から黒い霧のようなものが出て、少女は興奮状態から冷めたような静かな気持ちでいた。
座り込み、圭介だった少女を見上げる。
「圭介……」
「今は、愛よ」
そう言って、愛は冷たい視線でこちらを射抜き、近づいてくる。
殺される。
そう思い、咄嗟に目を瞑る。
しかし、何も変化が起きない。
恐る恐る目を開けると、眼の前にQRコードが表示されたパネルフォンが示されていた。
「私のライン。登録したいならしていいよ」
少女は脱力すると、愛の足にすがって泣き始めた。
否定されて育った少女が掴んだ初めての藁。
それが愛だった。
つづく




