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初デートだ。
そんな単語が脳裏に浮かびうきうきとする。
愛は俺の彼女だ。
そう思うと、そっけない彼女の反応も可愛らしく感じられる。
おかしいぞ。
彼女のいるいないだけで世界がまるで違ったものに感じられる。
日曜日、リトルシニアの練習試合を終えて着替えると、愛が坂の上で待っていた。
「待った?」
「試合見てたから退屈はしなかったわよ」
淡々とした口調で言う。
やっぱり良くわからん奴。
自分で提案しておいてうきうきとしないのだろうか。
「あー、腹減った。まずは腹ごしらえと行こうぜ」
「次郎は嫌よ。嫌いじゃないけど初デートで行くのは嫌」
「じゃあサンドイッチは?」
「アヒルボートね」
お互い苦笑する。
動画は劣化しない。
世間を騒がせた自分達の父母のデート場所は有名なスポットとなりつつある。
それをなぞるのも一興というものだった。
「お母さんは過愛想だわ」
愛はポツリと言った。
「貴方のお父さんが好きだったのに相手には既にパートナーがいたんだもの」
アリスの顔が脳裏によぎりギクリとする。
俺は慌ててそれを追い出した。
「俺達は行こう。最後まで」
そう言って、手を差し出す。
愛は吃驚したような表情でその掌を見ていたが、おずおずと手を伸ばして、掴んだ。
そうやって意識されるとこちらまで緊張する。
初デートは、ぎこちない歩行から始まった。
つづく




