その姿は凛々しく
久藤静子は突然の乱入者に混乱していた。
ガラスの割れる音。外から入ってきたのっぽの少年。そして宣戦布告。
状況を遅れて理解した同級生達が机を蹴り倒して教室の出口に殺到する。
その次の瞬間、乱入者は扉の前にいた。
今度は窓側に皆が集まる。
「さあ、愛・キャロラインはどこだ? 隠すとためにならんぞ」
「愛は殺させねーよ」
教室に颯爽と現れた、長剣を片手にした少年が言った。
確か、転校生。愛と仲が良いと噂の。
その立ち姿には、凛々しさすら感じられた。
「お前が六階道春武か。先生の邪魔をする者。ここで俺が処分してやる」
「お前如きにやられる俺じゃない。お前の目には、覚悟が足りない」
「覚悟だと?」
のっぽな少年は享楽的な笑みを浮かべる。
「アリンコ一匹潰すのに覚悟も何もいるかよ」
「ああ、そうかい」
春武がほくそ笑んだ次の瞬間、不可解な感覚を静子は感じ取った。
まるで周囲に見えない温もりが広がったような。
大きななにか安心するものに包まれているという感覚がある。
のっぽの少年は目を見開いていた。
「お前の魔力、ここまで……」
「お前はここで退場だ」
長剣が一閃。乱入者を両断した。
しかし、乱入者の身体は二つに別れることなく、黒い霧のようなものがその体から抜けていく。
「悪夢から冷めたか?」
長剣を肩にかづいて春武は優しく微笑む。
やはりその姿は凛々しい。
剣客、と言った感じ。
「……すまない。常軌を逸していた」
のっぽな少年はそう言うと、膝から崩れ落ちた。
つづく




