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悪の芽は潰えず

「今日は君達に特殊訓練を受けてもらおうと思う」


 廃校の一室で、教壇に手を置いて先生が言う。

 あらためての呼び出しに境照星は戸惑っていた。


 照星の周囲には見慣れぬ少年少女が自分も合わせて四人。

 いずれも霊気を帯びているのが感じられる。


「特殊訓練って、なんですか、先生」


 のっぽな少年が問う。

 照星もそれを知りたかったところだ。


「難敵、が現れてね。向後の脅威は取り除いておきたい」


「こてんぱんにすれば良いってことですか?」


 戸惑いつつ、照星は言う。


「違うな」


 先生は唇の端を持ち上げた。


「殺すんだよ」


 場に戦慄が走った。

 少なくとも、自分の知っている先生は温和で、こんなことを言う人ではなかった。

 けど、どれほど自分は先生のことを知っている?

 本名は?

 何故霊気というシステムを熟知している?

 妻子はいるのか?


 全て謎だ。

 自分はなにか壮大なことに利用されている。

 そんな恐怖が遅れてやって来た。


「なに、君達はそれを疑問に思わなくなる。さらに強い力も得られる。これはウィンウィンな関係と言うやつだよ」


 そう言った次の瞬間、先生はどす黒い霧のようなものを纏った腕でのっぽな少年の頭を掴んでいた。


(いつの間に移動した……!?)


 見えなかった。驚異的な速度だ。

 先生の手が纏う黒い霧がのっぽの少年の中に吸い込まれていく。


「目覚めよ、魔力。そして憑け、悪霊よ」


 先生は厳かに唱える。

 悪霊、と言ったか、今。

 次の瞬間のっぽの少年の身体から爆発的な霊気が漂い始めた。

 刺すような、とはこのことだ。


 のっぽの少年は微笑んでいた。


「先生、仰せのままに」


 さっきまで動揺していた様子はどこへやら。

 のっぽの少年は微笑んでいた。

 ボブカットの少女が腰を抜かして座り込む。


 逃げ場はない。さっきの速度を見て嫌と言うほどそうと感じられた。

 気づくと、照星は、先生に頭を掴まれていた。

 先生の口が開く。

 照星は遮るように叫ぼうとした。


「や、やめ――」



つづく

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