日常の変化
その後、親父と刹那を交えた訓練があった。
背後を任せる辰巳とのコンビネーション指南。
取り組んだことがなかったので、あらためて見直すと改善できる点が色々とあった。
むしろ、やっと出発したと言っても良い。
俺達は複数のサインを決め、実戦に向けての準備を終えた。
親父はあずき宅に泊まりに行ったが、前よりも距離を縮めた実感があった。
案外、気安い人だ。
刹那は去っていく親父の背中を見送る俺を見て、満足げに微笑んでいた。
「自分は魔力なくしたのに、気楽な奴」
思わず、拗ね気味に言う。
「それはそれ、これはこれってね。私が魔力失って春武達の団結が強まるなら安いもんよ」
「六階道家の跡取りが……」
「そう言えばそうだった」
緊迫した流れにそこまで気が回らなかったらしい。今更、青ざめている。
「取り戻すよ、全部、俺が」
「一人で気負わない、クソガキ」
俺の頭をはたいて、刹那は玄関へと入っていく。
そして翌日、朝の登校時間。
騒々しい出迎えが六華の家にやってきた。
辰巳、翔吾、愛の三人。
「今日から俺達もお前の学校に行くことになった」
辰巳が言う。
「まあ、仕方ないね。ちょっと遠いけど」
翔吾も苦笑する。
「つってもお前ら都内住みだろ? ここらの交通網考えれば誤差じゃん」
「それはそれで交通費とかが掛かって親の愚痴がな」
辰巳は苦い顔で言う。
「野球習わせるのに比べれば安いもんだろ」
「そりゃそうだ」
ギシカが遅れてやってくる。
俯いていた。
そして、気まずげに愛の横を通り過ぎた。
「おい、待てよ」
そう言えば昨日ギシカは妙なことを言ってたっけ。
俺達は登校路に着く。
辰巳は同じクラスだった。
一限目の授業が始まり、俺はふと忠告されたことを思い出して探知をする。
背筋が寒くなった。
悪霊憑きが、いる。
しかも、限りなく近くに。
誰だ? 誰が悪霊憑きか?
俺は思考の迷路にはまった。
覚醒すれば、被害が出る。しかも、子供に。
つづく




