世界は改変された
「模造創世石を悪用した後、それを手放す。そしたら捜査の手は伸びない」
親父は淡々とした口調で言う。
部屋の温度がさっきから数度下がっている気がした。
皆、青ざめている。
「つまりこの世界は、先生って奴の書き換えた後の都合の良い世界ってこと?」
刹那が震えるように言う。
「そうなるな」
親父は苦い顔で言った。
「模造創世石そのものは持てば見つかる。それならば新しい理を作れば良い。そういうことだ」
沈黙が漂った。
誰も、何も発さない。
膠着した空気の中、俺は刹那の温もりだけを感じていた。
「今後、どんな刺客が送られてくるかわからない。千紗は俺と行動を共にしてもらうぞ」
「元々、そのつもりでしたけどね。守る側と守られる側が逆転してきたかな」
「そうでもないさ。千紗の探知能力は練習や試合の最中に魔力が使えない俺にとっても有益だ」
「六華さんの護衛はどうしよう」
「紗理奈の娘が務める事になった」
俺を置いてけぼりにして話が進んでいく。
「俺はどうすれば良いんだ?」
俺の言葉の後に、しばしの沈黙があった。
刹那と親父は視線で相談し合っている。
複雑なやり取りではなく、どちらが押すかを決めかねていると言った感じだろう。
「皆で集まって行動してくれ。お前達が集まっていれば最悪天使クラスの相手も容易いだろう」
「任された。そしてついては親父、頼みがある」
「なんだ?」
親父が、意表を突かれたような表情になる。
俺から親父に頼み事をするのは初めてだ。
正真正銘、生まれて初めてだ。
「俺を、もっと強くしてくれ」
親父は更にきょとん、とした後、満足げに微笑んだ。
「その負けん気、それでこそ俺の息子だ」
絆されたような気分になる。
複雑な親子関係も一歩先に進んだかと言った感じだ。
「俺も、俺も!」
辰巳が手を挙げる。
「私も!」
翔吾も遅れて続く。
「良いだろう。お前達のコンビネーション、本物にしてやるぜ」
親父の頼もしい声に、俺達は騒々しく返事した。
つづく




