再会
辰巳は駆けていた。
言われてみると確かに感じる。
懐かしい気配。
しかし、嫌な予感が増す。
相手は自分にとって恩人だ。
それがもしも悪人ならば?
自分は感情のやり場に困るだろう。
しかし、相手、先生がこの場に待機しているということが、全てを結論付けている気もした。
辰巳は混乱の球場を後にして、外の関係者入口付近へと移動した。
いた。
くたびれた中年男性。初老にも見える。
先生だ。
「おや、君は……」
先生は穏やかに言う。
「先生……」
どうしてここにいる。
どうして恩人が憧れの人を拐おうとしている。
口にしたいのだができない。
確認するのが怖かったから。
「あんたが黒幕ね」
戦闘能力もないのに愛が強気に言う。
「と言うと、彼は喋ってしまったのですか」
「ええ。洗いざらい喋ってくれたわよ」
「困るなあ……」
先生の気配が変わって、辰巳は唖然とする。
彼が自分達に向けてくるそれは、紛れもなく殺気だったからだ。
ことここに至って、辰巳はようやく腹を括った。
「目撃者は殺せ、と徹底しておくべきでしたね」
「翔吾、合体だ!」
「う、うん」
戸惑い混じりに翔吾は言う。
先生の知らなかった一面に唖然としているのだろう。
そして、辰巳と翔吾は合体した。
この状態の辰巳なら、魔力の球を百五十キロで投げることができ、更に翔吾の脚力が反映されスピードも大幅に増す。
自分が先生を正す。
そんな覚悟は、すぐに翔吾にも伝わり、二人の気持ちは完全に一つとなった。
戦いが、始まろうとしていた。
つづく




