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駆けつけろ!

「伯父さんが!」


 駆けながら、ギシカが崩れ落ちた親父を見て悲鳴のような声を上げる。


「大丈夫よ、自分でヒールしてる」


 愛が前だけを見て言う。


「くっそ、こうも周目の前だと縮地なんて使えねえぞ」


 俺はぼやくように言う。

 頭の中は真っ白だ。

 例え親父とは言え人間だ。

 頭を一撃で吹き飛ばされればそこで終わりだ。


「まだ見えないのか、狙撃犯は」


 辰巳の声には焦りが滲んでいる。


「いた、あそこ!」


 場違いなテニスラケットを手にした男。

 その手から放り投げられた硬式テニス球は頂点に達しようとしていた。


 あれが親父の腹を貫いた凶弾。


(どうする? どうする? どうする?)


 縮地を使うかどうか照準する。

 その時には辰巳はもう動いていた。


 硬式球を手にし、投じる。

 それはテニスラケットを破壊し、粉々にしていた。


 そして俺は、短距離の縮地でテニスラケットの持ち主の前へと移動する。


「間に合った!」


 思わず微笑む。

 男は険しい顔で、俺を見ていた。



つづく

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