恋人ってお前だろう?
「ん……うん?」
愛のヒールで辰巳と翔吾が意識を取り戻した。
千紗が二人の前に微笑んでしゃがみ込む。
「じゃ、先生とその合体って技術について詳しく聞かせてもらいましょうか」
「その前に!」
愛がぐいっと割って入る。
「春武の恋人って誰?」
「誰って……」
辰巳と翔吾は顔を見合わせる。
「硬式野球の全国大会まで応援に来てなかったっけ、あんた」
そう言って愛を指す。
「恋人じゃないのか?」
辰巳は戸惑うように言う。
「ぜんっぜん違うわよ!」
愛が拗ねたように言う。
良くわからない奴。
「で、話は戻るけど、先生と合体について教えて」
辰巳と翔吾はにじり寄る。
「逃げようとしても無駄だぞ。さっきみたいに一瞬で間を詰めるからな」
俺は釘を差すように言う。
困ったような表情をしていた辰巳だったが、そのうち溜息を吐いた。
「先生は、故障して腐っていた俺の前にある日唐突に現れた。君の怪我、治るよ? って」
そう言って、辰巳は過去を語り始めた。
「顔は隠していた。マスクにサングラスに帽子。歳は中年だと思う。老人に見えることもあったけど、身体能力がそうではないと物語っていた」
「それって、その霊力抜きの身体能力?」
辰巳は頷く。
「俺の球を軽く捕球してた。霊力は使っていなかったように思う」
「そしてその目的については、わからない、と」
「慈善行為だと思っている」
辰巳は困った様子でそう言った。
本人にも良くわかっていない感じだ。
千紗は六華の方を見た。
「どうします? 未知の技術が横行しているのは危険だと感じますが」
六華は顎に手を当てて考え込む。
「春武。私の護衛は良いわ。先生の足跡を追って」
六華の提案に俺は仰天した。
「けど、陰陽連が叔母さんの護衛が足りないからって」
「私一人ならある程度対処出来る。それよりも、陰陽連と別系統の能力が跋扈していることの方が気になる」
「混乱の元になるでしょうしね」
千紗も同意する。俺達のブレインがそう言うのだからそうなのだろう。
「丁度そこに目撃者兼戦力が二人いるじゃない」
六華はそう言って微笑んで辰巳達を指差す。
「えっ」
俺達六人は異口同音にそう言っていた。
つづく




