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意気投合

愛の設定について誤りがあったので過去の該当部分を編集しました

・愛は春武の一学年下

・愛は春武に先輩を紹介する約束をした


という修正の上での展開です。申し訳ありませんでした。

「気に入った! お前のチームが全国大会に行った暁にはうちの部が応援団してやるよ!」


「言ったな? 俺は出るぜ、全国大会」


 俺達はがしっと手と手を握り合わせていた。

 愛の吹奏楽部の先輩沢村は大柄で声もでかい気の良い奴だった。


 窓際最後尾の俺の席の一つ前。

 ぽつりぽつりと探り合ってはいたのだが、昼休みで時間を与えられると一気に距離を詰めた。


 今では昔からの親友のような気楽さがある。


「しかし大した自信だな六階道。お前はそんなに野球が上手いのか?」


「十五歳以下の世界大会選抜メンバーに入ってる」


「ほう、年齢による能力差が大きいこの歳で大したものだ」


 感想がオッサンである。


「しかし野球は一人で勝てるほど甘くないぞ」


「あー、アテはあるんよな」


 苦笑する。

 辰巳のチームに行けば間違いはないだろう。

 辰巳というエースに俺のクリーンアップ。全国最強クラスになるだろう。


 出来るなら、エースの座も辰巳から奪いたくはあるのだが。


「なんか意気投合してる……」


 若干引いたようにドアからこちらを伺う少女が一人。愛だ。


「先輩、気に入りましたか?」


「おう、愛。こいつは昔ながらの付き合いみたいだ。ウマが合うという奴だな」


「まあ熱血馬鹿同士間違いないとは思いましたよ」


 そう言って引き気味に目をそらす愛。


「熱血馬鹿とはなんだ!?」


 俺と沢村が同時に声を上げ、クラスから笑いが起こる。


「馬鹿犬同士じゃれあってくださいね。んじゃ」


 そう言って愛は去っていった。

 一応様子を見に来てくれたらしい。律儀な奴だ。


「あいつは年上に対する口の聞き方がなっとらん」


 沢村は筋骨隆々とした腕を組み呆れたように言う。


「ま、親の七光りとあいつを指摘する向きもある。そうなればあいつの性格じゃ意地でもああなるか」


 そういうものの見方もあるのか。

 近づいて初めてわかることもある。


「あいつ、七光りとか言われてるの?」


「そりゃ母親が世界的有名人だからのう。お前も知ってるだろ」


「キャロラインって名字は誤魔化しようがないからなあ」


 俺の父の初恋の相手にして大手Vtuberのエイミー・キャロライン。

 それが愛の母だ。

 今でも彼女が来日した時の父を巡る騒動はネットで検索できる。


 個人Vtuberとしては世界トップクラスの登録人数だ。


 それを言ったら俺の父も世界トップクラスの人材なのだが、そこは上手く周囲が隠してくれている。

 名字を六階道と名乗らせたり色々と。


「あいつはあいつで大変なんだよ。わかってやれよ」


「ん、わかった」


 そんな苦労をしているとは思わなかった。

 だからあいつは捻くれているのか、と思いはしたが。


 ゴールデンウィーク明けの正午。この時間はまだ、平和だった。



つづく

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