大人達のあれこれ
「良いから繋いで!」
刹那は紗理奈につめよる。
「どーなっても知らないよ」
そう呆れたように言いつつ、紗理奈はゲートを開いた。
その中へ、刹那はずんずんと進んでいく。
そして、巨大な図書館のような建物の奥にある扉を開いた。
老いた長が、そこにはいた。
「長、どういうことです! うちの子に接触したそうじゃないですか! 私を無視して!」
「おう、おう」
長は舞っていたとばかりに髭を撫でる。
「刹那か。そなたは変わらんな。魔力を体内循環させているせいかのう」
「おだてても効きません。うちの預かってる息子にちょっかいを出したそうですね?」
「いかにも」
長は飄々とした様子で頷く。
「人手不足でな。さらには単独行動気質の対象。都知事のガードが足らぬ」
「……そのつもりであの子への特訓を許可していましたね?」
刹那は睨めつける。
長は飄々とした様子を崩さない。
「万が一とは思っていたがのう。まさか、あれほど育つとは」
ずるい、と刹那は思う。
自分の有利になるように決定権をけして離さない。
大人のしたたかさという奴だろう。
「ま、というわけでだ。春武君には東京へ行ってもらう。陰陽連の一員としてな」
「私は反対です」
「六華嬢も強い。悪霊憑き程度にはそうそう遅れを取らんだろう。まあ……」
「なんです? まだなにかあるんです?」
「最近増えておるのじゃよ。人手不足になる程度にな」
そう言って、長は初めて沈んだ表情になった。
「まさか、天界でなにかが?」
刹那はハッとしたような表情で言う。
「わからん。アリエル嬢も今や下天した身故な」
刹那と長はしばし見つめ合い、そのうち刹那が深々と溜息を吐いた。
貫禄負けだ。
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「また東京へ行けることになるんだって! で、お前もさ、入れよ、退魔チームに」
「なんで私が……」
電話口で愛が戸惑うように言う。
思わぬ再会に吃驚しているのだろう。
「ギシカも千紗も入るって言ってるぜ! 俺達で東京に一波乱起こしてやろうじゃないか」
「それじゃ悪役のセリフだよ」
呆れたように言う愛だった。
「けど、良いかもね。ギシカも千紗も入るなら。あんた一人なら付き合わなかったけど」
「一々一言余計な奴」
俺は高揚していた。
東京で大人と肩を並べて戦える。
それだけではない。
アリスと一緒にいられる時間が爆発的に増えるのだ。
俺は上京への期待に胸踊らせていた。
つづく




