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対峙

「また気配!」


 エイミーが悲鳴のように言う。

 こう言っている間にも彼女は高速でビルからビルへと跳躍を繰り返している。


 その身体能力にアリエルは目を丸くする。

 二回目のやり直しと言っていたがなるほど、納得の魔力コントロールだ。


 体内に魔力を循環させる六階道家の身体能力増幅術。

 彼女はそれをものにしているようだった。


「……そろそろわかんなくなってきたにゃね」


 アリエルは低い声で言う。

 模造創世石の気配が濃厚になった。

 此処から先は気配が強すぎてセンサーが効かない。霧の中にいるかのようだ。


「それでも、気配を嗅ぎ分けて見せる!」


 そう豪語すると、エイミーは気配の中へと突っ込んでいった。

 夜空には満月。公園には桜。

 心地よい春だ。


 しかし、濃厚な模造創世石の気配が全てを台無しにしている。

 ここは危険だ。魔法生命体ゆえの直感が警報を全開にする。


 こんな照りつけるような魔力、魔法生命体であるアリエルが直に当たれば一溜りもないだろう。

 そして二人は、東京駅の前で着地した。


 明らかに異変があった。

 人混みが割れているのだ。

 まるで、道を作るかのように。


 なにかを全員が避けて通った。

 意図的にそうしてもここまで綺麗に別れないだろう。

 アリエルはエイミーの顔を見た。

 エイミーも、覚悟を決めた表情だ。


「行こう。私達でケリをつけるよ」


「水臭いね、エイミー」


 そう言ってにょっと湧いて出たのは六華だ。

 手には神殺しの長剣を隠すためだろう包がある。

 スーツ姿だった。


「仕事帰りにここに寄ったらこの有り様。流石にブランクがあって一人で特攻するのは無茶だと思って待ってたのよ」


「心強いにゃね」


 アリエルは素直に言う。


「対神特化のその武器は模造創世石にも効く。来てくれて本当助かるにゃ」


「あんたはそうやって岳志と私のデートにもにゅっと出てきたわねえ」


「古い話よ。それともアリエルとデートが良い?」


「三人で女子会と行こうにゃ」


 アリエルの言葉に、エイミーは苦笑して頷く。


「なんか肩の力抜けちゃったなあ。心強いよ、六華」


 そう言って、エイミーと六華はハグしあった。

 そして、三人は対峙する。

 魔窟と化した東京駅と。


 駅の口からは仕事帰りの人々が道を作って吐き出されていた。



つづく

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