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色欲の具現化

「どこだ、ここは?」


「なんだ? なにがどうなっている?」


「剛、怖いわ」


「大丈夫だ、俺がついてる」


 想定していたより多くの人間を巻き込んでしまった。

 見たところ、二十人程度。


 サキュバスが唇に手を押し当て、ふうと吐息とともに放つ。

 その投げキッスで男達の目の色が変わった。


「さあ、その少年を捕まえなさい」


 彼らはなにかに取り憑かれたように、俺に向かって一直線に駆けてきた。


「まずっ」


 呟き、アリエルを抱きかかえて横に跳躍する。

 振り切るが、すぐに追いかけられる。

 これではいたちごっこだ。


 さらにたちが悪いことに、俺の新技、サンダーアローは電気属性の矢。

 直線上付近に人がいればそちらに引き寄せられ関係のない人間が巻き添えになる可能性がある。


(どうすればいい……?)


 俺は、思案する。

 そもそも、これはどういった状況なのだろう。

 先輩そっくりの女性に貴文そっくりの男性。現れる悪霊。出来すぎている。

 まるで、この流れを読んでいたかのような。


 見えないからくりのようなものを感じずにはいられない。


「どうしたにゃ、岳志」


 アリエルが、憤慨したように言う。


「だってよ。サンダーアローじゃ人巻き込んじまうよ」


「一緒に練習してわかったにゃ。岳志の鍛錬は、そんなことぐらいで揺らぐぐらいちゃちなものだったにゃ?」


 その一言で、俺は目が覚めたような気持ちになった。

 高々と跳躍する。

 アリエルを手放し、ファイアを振りかぶる。


 外野からバックホームする要領で、投擲する。

 それは一直線に、サキュバスの胸を貫いた。


 ありえない、とばかりにサキュバスは目を見開く。

 しかし、すぐにニイと微笑んだ。


「哀れな子。今頃貴方の大事な人は、インキュバスの玩具になっていることでしょう……」


 不吉な予言を残して、サキュバスは砂となって消えていった。


「剛! なーにが私を守るよ!」


「あんた、ちょっといい女が現れるとあんな感じになるのね」


「若い男の子を追っかけ回してばーかみたい」


 色々な被害を及ぼしながらも、サキュバス討伐は完了したのだった。

 それよりも、今は先輩だ。

 あずきこと丹下雫と妹こと井上六華が上手くやってくれていることをただ祈るのみだった。

 俺は世界を閉じ、アリエルと共に駆け始めた。



続く

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