新たな力は爆笑とともに
注意深く周囲を観察する。
移動しなくてもわかる入り組んだ迷宮。
天井もしっかりしており窓もない。
それでも周囲を観察できるのはどこかに光源があるからだ。
それに向かって進んでいくと、かびの生えた宝箱があった。
光はここから漏れている。
恐る恐る、開けてみる。
出てきたのは短剣、鎖帷子、ヴァイキングの帽子、木の盾。
そして、紙切れが二枚。
この紙切れのうち一枚が光を放っている。
その光る紙切れに触れた瞬間、未知の力が体の中に流れ込んでくるのがわかった。
知らない世界の理。知らない世界の見方。知らない呼吸の仕方。知らない体の使い方。知らない様々なものが体の中に流れ込んでくる。
そして、それらが体の中に溶け込むと、それまでそれを知らなかったことのほうが不自然なように感じられるようになった。
意を決して、脳裏に浮かんだスペルを唱えてみる。
「ファイア」
掌に炎が浮かんだ。
まじまじとそれを眺める。
俺が魔法を使っている。
俺を襲ったのは爆笑だった。
人間、理解の限界を超えると笑えてくるものなのだろうか。
ひとしきり笑って、ひとしきり炎を振りまいて、ひとしきり疲れて、ひとしきり現実逃避した。
けど、現実逃避しても変わらない。
俺は未知の迷宮に迷い込んで、魔法を習得した。
そして、武器や防具があるということは、これが必要な敵が出てくる可能性があるということだ。
鎖帷子があるのは心強い。
それらを着込み、武装する。
そして、もう一枚の紙を開く。
それは、地図だった。
現在地点に星マークが付いており、もう一つ星マークがついた地点がある。
「ここまで行けば出られるってことか……?」
まだ答えはわからないが、今はその考えに縋るしかなさそうだった。
俺は消えていた炎を再召喚すると、それを灯火として薄暗い迷宮を進み始めた。
さて、鬼が出るか蛇が出るか。
続く