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触るもの皆傷つけた

 刹那は扉付近の警備員に近づいていく。

 警備員は無線を取ろうと手を動かした。


 その瞬間、刹那の縮地が発動する。

 六大名家収束状態でなければ使えなかった縮地。

 それをこの七年で刹那は物にしていた。


 警備員の手を取る。

 その瞬間、ボキリと鈍い音がした。

 つい力が入ったか、と苦い顔になる。


 そして、声を上げられないように指で警備員の頭を指の先で弾いた。

 警備員は失神し、その場に倒れ落ちる。

 一応、確認として、警備員の様態を見る。


 脳に損傷はない。

 しかし、頭蓋にヒビが入っている。


(嘘でしょ……人間ってこんな脆いの?)


 ちょっと力を入れるとこれである。

 刹那は魔力を手のひらに込めると、体外に魔力を放出した。


 癒気功。

 これも刹那が七年で覚えた術の一つ。

 傷ついた体を癒やす治癒の術である。


 一先ず警備員は片付けて扉の奥に入る。

 そして、気配を消して内部に潜入した。

 模造創世石の気配はこの内部にある。


 この大会を開いたVIPは特等席でこの大会を観戦している。

 気配の強い方に向かって歩いていく。


 途中、二人の黒服に見つかった。

 黒服は銃を構える。


「動くな、止まれ!」


「部外者だな、なにをしに来た!」


 再び、刹那の縮地が発動する。

 刹那は相手の銃を奪おうとした。

 しかしその瞬間、相手の銃を持つ手がひしゃげた。


 相手は苦悶の表情を浮かべて転がりまわる。

 それを、刹那は戸惑った表情で見下ろしていた。


(脆い、脆すぎる……)


 一般人と戦うのが久々すぎて力の調整が難しすぎる。

 刹那は孤高だった。


 こうしている間にも模造創世石は近づきつつある。

 そして刹那は、もう一つの気配を敏感に察しつつあった。

 神の気配だ。


 天界の指針は模造創世石の関係者は全員抹殺。

 最悪この会場の関係者全員が殺される可能性がある。

 先に模造創世石を入手して献上して穏便にことを済まさねばならない。


 最悪、天界人と戦う可能性も出てきた。

 どうしてか、唇の端が上を向いている刹那なのだった。



つづく


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