転落劇
「なんだなんだ」
二軍から上がってきたピッチャーが六回までパーフェクトピッチング。見たこともない魔球を駆使して大活躍している。
相手も失投を多発し打線は大爆発。圧倒的大差だ。
俺もどさくさ紛れにホームランを一本打たせてもらっている。
(素直に喜べないなあ)
露骨に模造創世石の影響が出ている。
どうやら今回の所持者はオリックスファンのようだ。
近い範囲にしか影響を及ばせることは出来ない。
模造創世石、それも一体化が進んでない状態での限界だ。
それでもこれだけ現実を改変してしまうのだから末恐ろしい。
俺は七回の打席に立った。
相手ピッチャーのカーブが高く浮く。
(……悪く思うなよ)
真芯で捉えた。
打球はぐんぐんと伸びて観客席に突き刺さる。
そしてその時、俺はなにか肩が重くなったのを感じた。
まるで魔力の恩恵がなくなったかのような。
会場をざわめきが包んでいる。
「なんか岳志のホームランボールを掴もうとして失神した子いたらしいぜ」
「それだ」
俺は目を輝かせていた。
七回の裏、二軍から上がってきたピッチャーの魔球はどこへやら、甘い球を滅多打たれてあっという間に降板した。
これで合計三本ホームランを得したことになるのは釈然としないが、まあ仕方がないか。
今回でちゃっちゃと解決してしまっておこう。
つづく




