逆転の一手
シュヴァイチェの腕がエドゥルフを貫こうとする。
それを、エドゥルフは脇を抉られながら掴んで固定する。
なんて無茶を。
「隙は作ったぞ、岳志!」
「うおおおおおおお!」
俺はシュヴァイチェに斬り掛かっていた。
しかし、シュヴァイチェは反転して回避する。
だがそれは織り込み済み。
その動作は既に見ている。
長剣は囮。本命はガントレット。
俺はシュヴァイチェの逃げる足首を掴んでいた。
掴んだ。
対神特攻の神秘の装備。
それを使えば神の要素も持つシュヴァイチェは硬直する。
ギシニルの爪が、エドゥルフの槍が、シュヴァイチェに迫った。
次の瞬間、ギシニルと俺は弾かれ、エドゥルフの腹部が貫かれていた。
「な……ぜ……」
俺はヒールを唱えながら呻く。
シュヴァイチェは微笑む。
「今君が掴んだのは俺の悪魔の足だ。神秘の盾を持てていたのも俺の身体を構成しているものに悪魔の部分があるからだ。悪魔の部分に神秘の装備は効かない。そして」
シュヴァイチェがエドゥルフから腕を引き抜く。
「これでお別れだ、エドゥルフ」
シュヴァイチェの腕が、エドゥルフの胸を貫こうとした。
エドゥルフはそれを掴んで、ほくそ笑む。
「この瞬間を待っていたぞ」
光が迸る。
その瞬間、不思議なことが起こった。
シュヴァイチェの身体が、黒と白の二つの色に分けられたのだ。
俺は慌てて駆け寄り、シュヴァイチェに斬りかかる。
シュヴァイチェは後方へと跳躍して躱す。
エドゥルフは血を吐きながら半身を起こす。その身体に、ヒールを唱えた。
「いいか、岳志。シュヴァイチェの身体の白い部分は神の部分だ。黒い部分は悪魔の部分だ。白い部分には神殺しの長剣が効き、黒い部分には魔核がある。奴は神と悪魔の長所を得た。しかし同時に欠点をも内包したのさ」
「つまり……」
「ああ、奴を倒せる」
シュヴァイチェの顔から、再度笑みが消える。
「弱点がわかってどうなる。三対一で届かなかったのだぞ。それが二対一となる。お前達は徐々に削られ、消耗しているのだ」
「強がりだ、岳志。言ったよな。お前は、俺達の希望になると」
俺は、頷く。
決め球は絞れた。
後は叩き打つだけだ。
俺はエドゥルフを地面に下ろすと、神殺しの長剣を構えた。
隣にはギシニルが立つ。
「最後は俺とお前の二人か」
ギシニルが淡々とした口調で言う。
「終わりにしよう。魔核の位置はわかるか?」
「パーツ分けされてわかった。仲間達が言っている。自分達を操った奴の根源はここだと」
「なら、勝負を決めようじゃないか」
明けない夜はない。
長い戦いにも、終りが見えてきたようだった。
つづく




