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事態は想像より重く

 シュヴァイチェの下にたどり着くまで、しばしの間があった。

 俺達は、雑談をすることになる。


「シュヴァイチェ、一体どんな姿になってるだろうな」


「俺も悪魔の力を身につける前の姿すら見ておらんのだ」


 エドゥルフが考え込むように言う。


「きっと醜悪な姿だにゃ。肉塊みたいな」


 アリエルの言葉は真実味があり、皆の脳裏に巨大な蠢く肉塊がイメージされたのだろう。納得したように各々頷く。

 しかし、刹那は違った。


「動くのに理想的な形になってるんじゃないかな。私は四足獣だと思うな」


「そういや刹那は形態変化していく相手との戦闘経験が一番豊富だもんな」


 安倍晴明との戦闘を最初から最後までこなしただけのことはある。


「四足獣かぁ。私のバリアが要になるなあ」


 エイミーが憂鬱そうに言う。


「こちら側にも小回りが効くのが揃ってるからフォローし合えるさ」


 俺は励ますように言う。

 全員で全員を守り合う。そんな形になれば理想的だ。


 エドゥルフの形相が変わった。


「……馬鹿な」


 呟く。

 遅れて、エイミーの形相が変わった。

 目を見開いて、飛行を止めた。


 俺も、遅れて感じた。

 そして、崖底に突き落とされたような気分になった。


 シュヴァイチェの気配を感じたのだが、その気配というものが今まで感じたことのないクラスの魔力を帯びたものだったのだ。

 エドゥルフが可愛く思えるような、そんな規格外の気配。


 皆、それを感じたらしく、俺達は一時移動を辞めた。

 沈黙が漂う。


「引き返したい奴はいるか?」


 エドゥルフが問う。


「俺は行くぞ」


 ギシニルは歯をむき出しにして言う。


「貴方こそ死んだら駄目な人でしょ。貴方がシュヴァイチェを倒した後の魔界を統治するのよ」


 六華が呆れたように言う。


「私とアウラが神殺しの長剣で……」


「私は行くわ」


 エイミーが言う。


「人界の皆を危険に晒せない。私は十分可愛がられた。皆を守るためなら私の力は必要なはずだわ」


「私はどのみち終着点はここだにゃ。ヒョウンは戦力外だから帰ってもいいにゃよ」


「なにを言う。俺も盾ぐらいにはなるかもしれん」


「……行くか、皆」


 俺の言葉に、皆が頷く。


「行こう、岳志」


 刹那が微笑んで言う。


「決まりだな」


 エドゥルフが微笑んだ。

 シュヴァイチェの気配は見えない壁にも見えた。

 俺達は、その壁を超えた。

 そして、悪寒に身を震わせながらも真っ直ぐ飛んでいった。


 俺達は飛ぶ。

 各々、最終決戦への覚悟を胸に。



つづく

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