宿敵、再度
刹那は光を纏って最後の幻覚を破った。
そこに立っていたのは扇子を口元にやって微笑む陰陽師が一人。
思わず目を見開く。
安倍晴明だった。
倒したはずだった。
何故生きている。
しかし、生きているからには倒さなければならない。
あれから修練は積んだ。
岳志とエイミーの力を借りねば倒せない相手だった。
けど、今なら自分一人でも倒せる。
そう信じて、刹那は呼吸を吸って腰を落として構えを取った。
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エドゥルフは駆けるのを辞めた。
待っていたのは肉塊だった。
肉塊は蠢いて、いくつもある目でエドゥルフを見る。
その目に理性があることに気がついて、エドゥルフは進軍を止めたのだ。
「エドゥルフ殿か……」
その声にエドゥルフはハッとする。
「悪魔の長老殿か? 変わり果てた姿に……」
「全てはシュヴァイチェに逆らったがゆえの末路よ」
嘆くように言う長老だった。
そして長老は、黒いオーラを纏うオーブを取り出した。
「このオーブはこの空間の中枢だ。なんとか取り出すことに成功した。しかしの。私の力では分解できない」
エドゥルフは慎重にオーブを受け取る。
「あたうか?」
願うように長老は問う。
「やるしかあるまい」
複雑な呪法によって作られたオーブだ。
分解するとなれば相当な技術と時間が必要になるだろう。
一刻も争う現状、時間をかける暇はない。
しかし、これが一番の近道である気がしていた。
つづく




