ここ、福井だ
六華達は闇の中を歩き始めた。
「先頭は俺が歩く。敵と遭遇したらまず俺が説得を試みる」
そう言ってギシニルが先頭を務める。
そのうち、景色が変わり始めた。
広く薄暗いトンネルだ。そこを抜けると、金色の稲畑が六華達を出迎えた。
「嘘……」
六華は混乱のあまり呟く。
「魔界ではない、だと?」
太陽を見て、ギシニルも戸惑いの声を上げる。
「ここ、福井だ」
そう、六華は言った。
「福井と言うとどの辺りだ」
ギシニルが戸惑うように言う。
「富士山のずっと北。雪国だよ」
「雪国……だと?」
「殺気だ。来るぞ」
ヒョウンが言う。
混乱のまま、全員が臨戦態勢へと移った。
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それは昨日のことだ。
アリエル引退ライブとテロップがついた生放送配信が大々的に行われている。
二代目アリエル募集との告知も小さくされている。
エイミーとあずきもアバター姿で盛り上げに周り、コメント欄はどんちき騒ぎ。
「そっか。シュヴァイチェ倒したら地上にいよいよ用事なくなるもんな、あいつ」
そんなことを、今更思った俺だった。
最後だから見てやるか。そんなことを思い、動画を見守った。
そして、現在。
俺とエイミーは剣術道場で鉢合わせていた。
「ここは……?」
エイミーは戸惑うように言う。
俺は息を呑み、溜息を吐く。
「ハメられた」
並べられた名札の名前を見て全てを理解した。
そこには、井上六華の名前がある。
「ここは、夢の世界だ」
「夢の世界?」
エイミーが戸惑うように言う。
「そうみたいにゃね」
エイミーの影からアリエルが溜息混じりに言う。
「ここは六華が中学校時代に通ってた道場だよ。しかも過去の状態だ。現実ではない」
「シュヴァイチェの罠ってわけ?」
「そうなるな」
「私の無効化の光で無効化できないかしら」
「それはやめておいた方が良いにゃね」
アリエルが言う。
「流石のエイミーにも世界まで無効化する力はない。けど、シュヴァイチェが作った空間は無効化できるかもしれない。その下が魔界じゃなかったら私達は火山の火口へ一直線にゃ」
エイミーは顎に手を当て考え込む。
「取り敢えず歩くか。他の四人はどうにでもできる実力があるが、六華とヒョウンが心配だ」
エイミーは頷くと、歩き始めた俺の後を追い始めた。
なんにせよ、最終決戦の火蓋は切って落とされた。
この先にどんな結果が待ち受けているか、まだ誰も知らない。
つづく




