魔界の門が開く日
その日、富士山の山頂に黒い禍々しいゲートが姿を現した。
俺達はヘリから昇りつつあるそれを視認した。
メンバーは、俺、エドゥルフ、アリエル、ヒョウン、ギシニル、エイミー、アウラ、アリス、刹那、六華。総勢十名。
俺は神秘の装備の大半に身を包み、長剣だけは使い慣れた六華に手渡している。
「影に入るなら今のうちにやっておけ」
エドゥルフが手短に言う。
「突入してすぐ戦闘になるかもしれない。何体相手にする羽目になるかわからんぞ」
「そうだな」
俺は考え込む。
「アウラ」
「なんじゃ?」
「スキル、姫の威光はお前単独でもある程度の効力は発揮できるか」
「侮るでない。妾の威光は妾単独でも十分に通ずる。ただ、人の子の力があれば効力は倍加するというだけじゃ」
「それじゃあアウラ。六華のフォローを頼めるか」
六華は目を丸くした。
「お兄?」
「お前には範囲攻撃がない。囲まれると辛い。それに」
そう言って、俺はアリスに拳を差し出す。
「相棒だろ? アリス」
アリスは微笑んで、俺の拳に拳を当てた。
「うん」
「アリスの飛行能力とブラッドティアーズがあれば十分に敵に対応できると考える。そこに六華のアウラのスキルと神殺しの長剣が加われば相乗効果が期待できる」
「私はエイミーの影に入るにゃよ」
アリエルはそう宣言する。
「敵は悪魔。魔法が効き辛い。精々エイミーの無効化の光と協力してキルカウントを稼ぐにゃ」
「決まったようだな」
アリスが俺の影に、アウラが六華の影に、アリエルがエイミーの影に入る。
準備は整った。
後は、ゲートに入るだけだ。
「雑魚はアウラのスキルで無効化する。一気にシュヴァイチェと魔界六団騎まで駆け抜けるぞ」
エドゥルフは腕まくりする。
皆、頷いた。
そして、運命の瞬間がやってきた。
皆、ヘリコプターからゲートに向かって飛び降りた。
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気がつくと、六華は闇の中だった。
その中に炎が灯る。
黴臭い迷宮の中だった。
「ハメられたな」
そう語るのはギシニルだ。
六華は、ギシニルとヒョウンと共にいた。
「分断策だ。相手は先を取って突入してくることを想定していたんだ」
ギシニルは、苦い顔で言った。
圧倒的な力を持つエドゥルフや、エイミーアリエルコンビや、岳志や、六大名家収束状態の刹那と離れてしまった。
それが一抹の不安を六華にもたらした。
つづく




