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初めてのインターネット

「げっ」


 アリスは、アウラの姿を見た途端に下品な声を上げた。


「なんじゃ、妾の姿がそんなに気に食わんか」


 俺に見せていた弱気な姿勢はどこへやら。アウラ嬢は余裕綽々と言った様子で迎え撃つ。

 年少組同士仲良くしてほしいものである。


 まあ、自分より弱い生物全てを見下しているアウラと六華を傷つけた相手を許せないアリスでは水と油だろうが。

 問題は場所である。


「俺の部屋なのになんでいんの、アリス」


「いいじゃない、相棒なんだから」


「んー……」


 公私混同甚だしいと言ってしまえば相手が傷つくだろうし難しいラインである。

 俺は一先ず気にしないことにして、パソコンを立ち上げた。


「ほほう。居間にもあったが珍しい箱じゃな。最近は人間もテレパシーを使うようになったか」


「まあ電子情報網って奴でな。回線を通じて映像や音声を伝えることができるようになった。記録した過去の映像もだ」


 そう言って俺はYouTubeを開く。

 アウラは身を乗り出して興味深げにそれを見る。


「ほうほう、文字に曲まで入っておるではないか。人間の娯楽心というのはいつの時代も凄まじいものよ。して、この電子情報網とやらはどこまで通じておるのじゃ? 蝦夷が精々か?」


「有り体に言えば……地球の裏側まで……」


 アウラがバランスを崩して地面に突っ伏す。


「それは流石に大袈裟じゃろう」


「見るか? 真夜中の散歩映像」


「今は朝じゃ」


「地球には時差ってものがあって、離れている場所じゃ時間が違うんだ。離れていれば離れているほど時刻は離れていく」


 アウラは黙り込んで考え込んだ。

 絶句した、と言ったほうが正しいかもしれない。


「人間という生物はいと恐ろしいものよ……好奇心を元に天の国を追放されたと言うのもわかる」


「ちなみにあずきとアリエルとエイミーはこういう仕事をしている」


 そう言って、俺は三人のVtuberチャンネルの動画を開く。

 三人のアバターが会話を交わしていた。


「なんじゃこれは、絵が動いておる」


「Vtuberって言ってなー。まあ日本に馴染んで久しい文化だよ」


「喋っておるだけだがこれが仕事なのか?」


「ファンがついているからな」


「妾がやればさぞ信仰を集めることだろうの」


「炎上するからやめて」


 その言葉は俺とアリスの口から異口同音に発せられたのだった。


「街も見てみたい。岳志、街を見せてくれるか」


「いいぞー。Googleストリートビューで見せてやるよ」


「岳志さんアウラに冷たいのか親切なのか良くわかんないね……」


 呆れたように言うアリスだった。



つづく

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