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岳志対アウラ

 さて、アウラの発言が事実かどうかまず確かめる必要がある。

 つまり、どの程度タフかということだ。

 それによってこちらも切る札が変わってくる。


「準備は良いかよ」


 俺の言葉を脇に、ヒョウンが六華を抱きかかえて下がっていく。

 俺は神秘のネックレスを首にかけると、両手に退魔の短剣を呼び出した。


「いつでも来るが良いぞ」


 アウラの表情には笑みすら浮かんでいる。

 なら遠慮なく。


 俺は縮地を使って一瞬で両者の間の距離を詰めた。

 その勢いのまま退魔の短剣を振り抜く。

 鈍い音がした。

 アウラの腕に当たって退魔の短剣が折れた。


 なんて硬度。


「先程の娘と言いなんという腕力じゃ。大抵の者なら手から武器がすっぽ抜けておったであろうの」


 アウラは感心したように言うと、反撃の一撃を繰り出す。

 空間を圧縮したような神速の一撃。

 しかし、躱す。

 服にかすったが、摩擦熱で火が起きた。


 確認はできた。耐久力は十分だ。


(刹那、技を借りるぞ……!)


 硬い相手にはとっておきの技がある。

 六階道家の秘伝の技が。


 俺は一旦距離を置いて、周囲を飛び回って相手を撹乱すると、一気に距離を詰めて肘打ちを放った。

 体内の魔力を相手に放ち、相手の体内に移動させる。

 そして、爆発させる。


「鉄破孔!」


「なっ……!」


 体内での魔力の暴走だ。

 外角が硬い分内部はやわだったと見える。

 アウラは血反吐を吐いてその場に蹲った。


「なるほど、これが人間。創意工夫で得体のしれない技を持ってくる。久々すぎて侮っておったわ……しかし、妾はまだ負けては……ひゃあっ」


 アウラは最後まで言えなかった。

 俺に腰を持ち上げられたからだ。


「人間界じゃ悪ガキにはどう折檻するか知ってるか?」


「し、知らぬ! そんなことは知らぬ! 妾はそもそも悪ガキではない! 竜族の姫ぞ!」


「なら教えてやるよ。こうするんだ!」


 そう言って、俺は、アウラの尻を全力で引っ叩いた。

 風船が割れたような良い音がした。


「ひゃうん!?」


「六華のダメージ分はやるから覚悟しておけ」


「待て、待たぬか、竜族の姫にこのような愚行……ひゃうん!?」


 俺の全力の一撃はそれなりに効いているらしい。

 鉄破孔も応用しての一撃だ。効いていてもらわないと困る。

 その夜、エイミーが帰ってくるまで、エイミー邸には風船の割れたような音が木霊した。


「ありゃー本当にキレてるにゃね」


 アリエルが呆れたように言う。


「普段はブラコンブラコン煩いけどお兄も相当シスコンなのよね」


 とぼけた調子で言う六華なのだった。

 音が一つ響く事に、アウラのプライドが折れる音が隠れて聞こえているような気がした俺なのだった。



つづく

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