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嫌ダ

 俺は片手で即座に決闘のクーポンを起動した。

 世界が白一色に塗りつぶされる。


 そして、俺は上空から落ちてきた肉塊を蹴り飛ばして、距離を取った。

 そう、それは肉塊だった。

 蠢く肉塊。


 新たな進化を遂げようとしているかのような。

 アリスが俺に寄り添った。


「岳志さん、腕……!」


「ああ、大丈夫だ」


 激痛に苛まれながらも微笑み顔を作る。

 そして、ヒールを唱えた。

 千切れるか否かといったところだった腕は、あっという間に修復した。


 そのうちに、肉塊は筋骨隆々とした男性のシルエットへと変わっていた。


「美味い……イノウエタケシの肉がこんなに美味いとは。段違いに自分がスケールアップしたのがわかる」


 悪魔は微笑む。


「もっと、食わせろ」


 アリスの行動は素早かった。

 指で相手を指すと、赤いなにかを放出し、相手の心臓を射抜いたのだ。

 しかし無駄だ。相手は自己修復する。


「思っていた通りだが、お前、こちら側の存在だな? 何故イノウエタケシに味方する。協力するなら一緒にイノウエタケシの肉を分け合ってやってもいいぞ」


「アリス。悪魔は首を断たないと駄目なんだ」


「首ヲ断てばイイんデスね」


 そう言うと、アリスの指先に幾重もの赤い物体が現れた。

 それは一斉に放射されると、悪魔の首を食いちぎるように断っていた。


 わかったことがある。

 アリスは、キレさせると怖い。


 悪魔が倒れると同時に、アリスがふらついて倒れた。

 顔色が悪い。


「お前、まさか放射してた赤い奴……血液か?」


 アリスは、にへらと苦笑する。


「わかんないデス」


 どうしたものだろう。

 医者を呼べばアリスの体の異常はすぐに露見するだろう。

 しかし、このまま失血状態でいさせるわけにはいかない。


 彼女がヴァンパイアに類する者だと仮定すれば、解決策は一つ。

 俺は倒れた悪魔の体を持ち上げると、アリスの横まで持ってきて、下ろした。


「こいつの血を、吸え」


「嫌ダ!」


 アリスは真っ青な顔で言う。


「そんなことヲしたら、私は本当に化け物にナッチャウ」


「けど、このままじゃ失血死だぞ。多分お前はヴァンパイアの親戚だ。血を吸えば、治る」


「嫌ダ、嫌ダ……」


 アリスは真っ青な表情で首を横に振る。

 俺は止むなく、初期装備のナイフを取り出すと、自分の手首の血管を深く切った。


 血がとめどなく溢れ出す。

 それをアリスの口に押し付けた。


 悪魔達が欲しがる俺の血。

 それならば、アリスの抵抗感も少しは薄れるのではないかと思ったのだ。


 アリスは驚いたような表情をしていたが、そのうち安らいだような表情になると、寝てしまった。

 俺は微笑んでいた。


「見つけたぞ……新必殺技の糸口」


 そう、問題は解決しそうだった。

 魔法ではない範囲攻撃を、俺も取得できる可能性が出てきたのだ。

 アリスは安らかに眠っている。

 その頭を、俺は撫でた。



つづく

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