父親の背中
遥の実家に戻ると、遥の父は既に酔い潰れていた。
「普段はこんなことないんだけどね」
遥は苦笑してそう言う。
「寂しいのよ」
遥の母が苦笑混じりに言う。
「娘が自分の手を離れようとしていて」
胸にぐさりときた。
だとしたら、原因は自分だ。
表情に出ていたのだろう。遥の母親は慌てて続ける。
「ああ、岳志君は気にしないで。自然なことなんだから。むしろ、喜んでる面も大きいんだからね」
「そういうもんですか」
「そういうもんです。早く就職して、孫の顔見せて、私達を安心させて頂戴」
「頑張ります」
そう言って、遥の父の隣に座る。
「まだサンタを信じてた頃さぁ」
遥が口を開く。
「クッキーとミルク、枕元に置いておいて。それも凄い量。お父さん、頑張って食べたんだなって」
「ジップロックに入れて数日かけて食べてた」
「それは知りたくなかったな」
遥は苦笑する。
この人達に大事に育てられた一人娘を預かるのだ。
それは非常に責任のあることなのだ。
それをあらためて実感した一幕だった。
「俺……」
俺は、思わず口を開いていた。
後先考えず。
なにを言いたいかもわからず。
思ったままのことを、口に紡いだ。
「立派な人間に、なるよ」
遥の母は、一つ頷いた。
「期待してるわ」
今日、俺は一つ重荷を背負った。
けれどもそれは、心地良い重荷だった。
二人で背負っていこう。遥と二人で。
つづく




