神に挑む
相手は空中に浮き上がる。
空を飛ぶ術がない自分にはこの時点で相当な逆境。
しかし、跳躍力と投擲能力でなんとかそのマイナスを埋めていくしかない。
縮地で一直線に相手の喉元に接近し、急所への二刀の連撃。
相手は最初は槍で弾いていたが、追いつかないと思ったのか双刀に持ち替える。
そこで、落下が始まった。
俺は短刀を一旦消して、ファイアアローの連弾を投擲する。
それを回避することに相手は追われる。
そして俺は着地すると、被弾を防ぐために即座に距離をおいた。
「ほう、人間にしては戦い慣れているな」
「勝負事の経験値に戦いの経験値が加わった。俺を舐めないでもらおう」
「なら、これはどうかな」
そう言って、相手は手をかざした。
いけない。
直感的にそう感じて、お守りを退魔の双剣に変換して投擲する。
相手はそれを弾くことで一旦集中を解いた。
そして、俺は再び特攻する。
今のは、術の展開に移るモーション。
術を使わせたら負けだ。
そんな嫌なイメージが俺の中にあった。
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(冷静になれ、ここは頭の使い所だぞーあかねー)
あかねはそう思案しつつも、相手の攻撃を避け続ける。
どちらかと言うと頭脳労働担当のあかね。
武闘派の刹那や与一ほど身体能力は高くない。
それでも、基礎的な訓練は受けているので、古神像のパターン的な攻撃は辛うじて回避できている。
そこでふと、思いついた。
二体の古神像は今、あかね一人に向かって迫りよっている。
縮地を使う。
これは、本来のあかねにはない力。
あかねの術のコントロールの巧みさと、岳志から借りた膨大な魔力が合わさって織りなされる力。
壁を蹴って、古神像の一体を蹴り飛ばした。
蹴られた古神像はよろけ、もう一体の古神像を巻き込んで倒れる。
そこであかねは縮地を切った。
「これで、お仕舞ね!」
あかねの両手にバスケットボール大の漆黒の空間が現れる。
術名、あんこく。漆黒のブラックホールは、いかなるものをも吸い込んで粉々に砕く。
それは、あかねの落下地点にあった二体の古神像をもろとも吸収して破壊した。
あかねはスマートフォンを取り出すと、岳志の番号をコールする。
しかし、岳志は電話に出ない。
あかねは冷静に考える。
岳志から借りている魔力が消えていないということは、まだ交戦中ということだ。
ならば、自分ができることは一つ。
あかねは、自分に集束した岳志の魔力の一部を、解放した。
つづく




