鹿児島
朝食の席。
よりによって雛子と一緒になった。
脳裏によぎるのは昨日見た雛子のボディライン。
気まずいったらない。
しかし雛子は平然とした様子だ。
「岳志君、おっはよー」
そのいつもの明るい様子にこちらが動揺する始末。
「お、おう。おはよう」
「今日もバイト漬けだよ。金稼がなきゃ」
「独立志向だもんな」
「そうなんだよー。このままエイミー邸に厄介になっても良いんだけどそうもいかないだろうしね」
「一時的な緊急避難だからなあ……」
女の子ってこういう時強いなあって思う。
俺は昨日のことを引きずってオロオロしているのに雛子は何事もなかったかのような様子を作っている。
勝てないな、と思った。
あずきが料理を運んできた。
慌てて、腰を浮かす。
「配膳ぐらい手伝いますよ」
慌てて言う。
「遠慮しないで。今日もたっぷり食べてね、カツ丼大盛り!」
朝から重たい。
今日も自主トレ頑張らなきゃなと思う瞬間である。
こうして俺の身体能力は維持されているのかもしれない。
二人して黙々と食事を摂る。
そこに、アリエルが階段を駆け下りてきた。
「道具の在処が見つかったにゃ!」
「本当か?」
「しかも、二つ!」
俺は驚いた。
それはつまり、今回の事件の終わりを意味することではないか。
「場所は?」
「鹿児島」
日本列島の南端。
歴史を何度も揺るがせた薩摩隼人達が生まれた地。
そこに、神秘の道具があるという。
今回の騒動も大詰めを迎えようとしているようだった。
+++
「神秘の道具が見つかったか」
男が言う。
「はっ」
女性が跪いて言う。
「なら、今回は自ら俺が動こう。多少の危険はやむを得まいな。このシュヴァイチェ自ら動く」
そう宣言して、シュヴァイチェは唇の片端を持ち上げた。
つづく




