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秘密

「私はドラゴンが出てきたから腰抜かしてたけど、岳志君、手から炎出してましたよね。それに、三メートルはジャンプしてた。人間業じゃないです」


 幸子は震えるように言う。


「貴女もなんなんですか? アリエルさん。それが当たり前みたいに!」


 アリエルは面白がるように微笑んでいる。

 ぴょこぴょこと動く猫耳を幻視した。


「なんか問題でもあるかにゃ?」


 アリエルの言葉に、幸子は目を見開く。


「炎を出そうが三メートル飛ぼうが岳志は岳志にゃ。それともそれだけで、お前の中で岳志の評価は変わるのかにゃ?」


「そ、それは……」


 相変わらず痛いところを突くやつ。

 俺は仕方がないので、順を追って説明することにした。


「最初から説明するよ、幸子。色々突拍子もない話だから、驚くなとは言わないけれど、俺を信じてついてきてほしい」


「岳志君を、信じて……」


 幸子は、迷うように言う。

 しかし、そのうち、決意が固まったように言う。


「わかりました」


 こうなれば女は強い。

 俺は微笑んで、迷宮のクーポンをスマートフォンで呼び出した。


「それじゃ、さっきみたいにちょっと場所移動するよ。驚かないでね」


「は、はい」


 迷宮のクーポンをタップする。

 周囲が果てしない暗澹とした迷宮へと変化した。

 俺はファイアの呪文で灯火を呼び出す。


「暴漢を倒したその日、俺は不思議なクーポンを入手した。それを使ったら、飛ばされたのがここだった。そこで俺は天女と出会い」


「女神様にゃ」


 アリエルがどうでもいい補足を入れる。


「女神と出会い、現実世界には感情を歪める悪霊が沢山いると伝えられた。彼らを狩る者も必要だと」


「それが……岳志君?」


「そういうわけだな。アリエル。元の場所に戻してくれ」


「人使いが荒いにゃあ」


 そう言いつつも、アリエルは指を鳴らす。

 俺達は高校の敷地内に戻ってきていた。


「それ以来、俺は退魔師みたいなことも生活の合間にするようになった。自殺願望を持っているような人が見違えるように明るくなったり、さっきみたいにいじめしてた奴が見違えるようにいい奴になったり。まあやりがいはある」


「けど……あんなことしてたら命がいくらあっても……」


「まだ試してないけど、ヒールのスペルも覚えてる。それに、俺の魔術は天界人のお墨付きだし、体術も中々のものなんだぜ」


 やや誇るように言う。

 けど、幸子は納得していないようだ。


「アリエルとはその関係でつるむようになった。天界人からつけられた悪霊ナビなんだが、どうも生活費を渡されていなくて、住む場所も食べるものもないんだ。だから、仕方なく俺と同棲という形を取りかけた。誤解があったら嫌だからここで訂正しておく」


「ああ……なるほど……」


 幸子の目に、光が指した。


「じゃあ、二人は、思い合ってるとかそういうんじゃないんですね?」


「なんでこんな駄猫と」


「なんでこんなオタクと」


 俺達は言い合って互いに視線で火花を散らした。


「ちょっと、安心しました」


 幸子は、上機嫌に言う。


「それじゃ、帰ります。退魔師の仕事も大変だと思うけど、無茶だけはしないでください。岳志君の体は宝物なんですからね」


 そう言って、幸子は上機嫌に帰っていった。


「もっと怒られると思ってた」


 俺は呆気にとられて言う。


「岳志はもうちょっと女心について勉強するべきだにゃー」


 アリエルにわかったように言われると腹が立ったので、頬をつねっておいた。


「駄猫」


「糞陰キャ」


 全く仲麗しい我等である。



続く

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