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変革

 翌日、起きたら世界が変わっていた。

 スマートフォンには大量の着信履歴。

 メールボックスにも大量のメール。


 見ると、知人からのものがほとんどだ。

 慌てて、メールから一つ、一つ確認してみる。

 その中のURLを一つ、開いてみた。


 Xのアプリが起動した。

 開かれたページには俺とサングラスに帽子姿のエイミーが八番ラーメンで食事をとっている写真が掲載されている。

 本文はこう書かれている。


『エイミーキャロライン北陸で発見。軟式王子も。彼女いるんじゃないの? 蛙の子はやっぱり蛙』


 リポスト数一万。

 その数にただただ絶句。

 リプライ欄ではこの店舗がどこの店までかまで特定されている。


 この写真の悪意があるところはアリエルが写らないように撮っているところだ。

 さも二人で食事しているかのように撮ってある。


 俺はどうしたものかと思いつつ、エイミーの部屋の扉をノックした。

 これは困ったことになった。


 エイミーは苦笑顔で出てきた。


「バレちゃったねー」


「軽いなおい」


「見られたらなんだから、部屋、入って」


「うん」


 促されるまま、部屋に入る。


「まあ、あの地元だもの。こういうこともあるかと思って手は打ってあります」


 そう言って、エイミーはスマートフォンを操作して、YouTubeを開いてみせた。

 そして、三十分前に配信終了した動画を開いて見せる。


 映ったのはエイミーだった。

 それも、見知らぬ部屋にいる。

 どこかのマンションの一室だ。

 画面の中のエイミーはカメラに向かって手を振った。


「おはようございます、お騒がせしております、エイミーです」


 そう言って、画面の中のエイミーはテレビを付けて見せる。大型のワイドテレビだ。

 映ったのは、関東地方の天気予報だった。


「見ての通り私は東京にいます。北陸にはおりません。ここが自宅って普段から見せてないから証明はできないけどー……あー」


 そう言うと、画面の中のエイミーはカメラを持って、ベランダに向かった。


「この前撮影で使った七輪があります。どう? 自宅って証明にならないかな?」


 伺うように言う。


「まあ、コロナで調子が悪いのでこの辺りにしておきますが、最後に一つ」


 そう言って、エイミーは言葉を区切った。


「私のことについて、ネットで悪評を言いふらしている人が以前からいるのは皆さんも知っていると思います。私は今まで、それを無視してきました。言いたい奴には言わせておけ、と」


 そう、それが昨日までのエイミーの主張。


「けど、それが周囲の人間にまで及ぶのなら、私は相手が一線を超えたと判断します。その意味は、今後明らかになるでしょう。では」


 そう言って、動画は終わった。

 次の動画への誘導が始まり、エイミーは無言でスマートフォンを待機モードに戻す。


「どういうからくりだ?」


 俺は戸惑い混じりに言う。

 エイミーは北陸にいる。現に目の前にいる。けど、動画のエイミーは東京にいるかのようだ。


「紗理奈さんの式神。台本は簡単だった。合鍵はあずきに預けてた。機材の説明がちょっと手間取ったぐらいかな」


「紗理奈かぁ……」


 呪術のコントロールに長けていた紗理奈だ。これぐらいはやれるのかもしれない。


「一応私達は政府の利害に則って行動しているわけだからね。陰陽連は協力体制を取ってくれる。カバーもしてくれるってわけ。その辺りは事前に調べておいた」


「こんなことが起こるかも? って思ってたのか」


「……まさか、とは思ったけどね。だって、何年も前のいじめを今もやり続けてやろうなんて考えてる馬鹿がいるなんて、思いもしないじゃない」


 そう言って、エイミーは肩を竦める。


「立山に向かいましょう。この辺りにいるのは危ないわ。タクシーを呼んで早急にこの近辺から離れましょう。予備の帽子とサングラスもあるわよ」


 そう言って、エイミーはスーツケースをあさり始める。

 今回の騒動、今後のエイミーの芸能活動にどんな影響を及ぼすのだろうか。

 今の俺には想像もつかない。


 けど、まずはここに来た第一目的だ。

 立山の麓にあるパワースポットの探索。それを終えて早急に帰る。

 それを果たすことに俺の心は切り替わった。



続く

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