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検索

 さらに検索してみる。


『エイミーキャロラインが不倫の子というのは本当ですか? 地元では彼女の母親は有名人との子供ということで吹聴していたとか。だとしたら幻滅です。エイミーの収入はその母親にも仕送りされているんもでしょうか?』


 これは胡散臭い。

 質問に見せかけた名誉毀損ではないか。


『エイミーキャロラインは不倫の子。蛙の子は蛙。軟式王子ブームに乗っかって岳志君にすり寄ってきた』


『エイミーキャロラインは有名人の子供だってことを鼻にかけた嫌なやつだって地元じゃ有名だよ。不倫の子な癖にって皆笑ってた』


 そんな書き込みがどんどん出てくる。

 俺は我慢ならなくなって、立ち上がると、エイミーの部屋の扉をノックしていた。


 エイミーは戸惑うように扉を開けた。


「なあに? 岳志」


「エイミー、お前、ネットでなんか書かれたら嫌だからって言ってたよな」


「うん」


「それで気になって、検索してみた」


「あー……」


 エイミーは苦笑する。


「検索しちゃったか」


「いつからだ? いつからこんなことになった?」


「日本に帰ってテレビに出始めてからかな。嫉妬って嫌だよね。小学校時代のいじめで未だに足引っ張ろうって奴がいるんだから」


 やれやれ、とばかりにエイミーは言う。

 俺はその態度に苛立った。


「事務所に対処してもらえよ。この文体。同一人物臭いだろ。今なら開示請求してもらったり警察に被害届出したりできるんだろ?」


「んー? しないよ?」


 エイミーは目を逸らして言う。


「なんでだよ。お前の足を引っ張ろうとする奴をどうして庇う」


「あのね、岳志」


 エイミーは俺の目をまっすぐに見て苦笑する。


「出る杭は打たれる。有名になると、足を引っ張る人間っていうのはどうしても出てくるんだよ。それに一々反応していたらきりがない。私は岳志やあずきやアリエルや理解者や応援してくれる人が沢山いる。それで十分。それでも相手が一線を超えてきたらその時は流石に考えるけどね」


「けど……こんなのただのサンドバックじゃんか」


「岳志だって色々言われてるよー? けど、これ見て、知らない方が良いと思ったでしょ?」


 俺はぐっと詰まる。


「……思った」


「ね。おかしい人間ってのは確かにいるんだよ。まともに相手してたら疲れるだけだよ」


「けどよお……」


 釈然としないものが残る。


「この話はこれでおしまい。当事者である私が納得してるんだから、岳志があれこれ言う権利はないよ」


 そう言われてしまっては、俺は反論の言葉を失う。

 Vtuberとして活動して何年目だろう。去年の時点で登録者数二百万人超。色々な経験をしてきたのだろう。

 俺の幼馴染は、俺が思っているよりも、大人になっていたのかもしれない。

 子供仲間だと思っていたのに。


「けど、心配してくれてありがとね」


 そう言って、エイミーはにかっと笑った。

 ほだされて、俺も苦笑した。

 そうか、この話はこれでおしまいだ。釈然としないけれど。


「明日は立山だ。長距離移動に備えて今日は八番ラーメンだ」


「好きだね、八番ラーメン」


「あこの炒飯が好きでなあ」


「ミスドの炒飯と味そっくりだよ」


 俺は絶句した。


「マジで?」


「マジ」


「東京で味わえるんじゃん!」


 東京で俺がどれだけ八番欲を抑えていたことか。


「ま、八番の味も味わっとこか。んじゃ、今日は豪勢にいこー。また、どんな戦闘が待ってるかわからないしね」


「おう」


 そう言って、俺達は一旦別れた。

 エイミーはもう、一人で閉じこもってる子供ではなくなった。

 それが嬉しいような、寂しいような。


 皆少しずつ成長していく。それを改めて実感した一件だった。

 食事をとっている時。

 カメラのシャッター音を聞いた気がした。



続く

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