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神殺しの長剣

 俺達は躊躇いつつも、洞窟の奥へと進み始めた。

 俺を先頭に、エイミー、刹那、殿にアリエルが続く。

 エイミーは防壁を俺の周囲に張り巡らせてくれている。


 そして、光源が見えてきた。

 異常な光景だった。

 陽の光も差さぬこの洞窟の中で、草木が異常発達している。


 その中央で、一本の長剣が地面に突き刺さっている。

 長剣の柄には丸い玉が一個埋め込まれており、それが自らの生を主張するかのように輝きを放っていた。


「これは……とんでもないにゃよ」


 アリエルが呆然とした口調で言う。


「対神性属性の剣。神殺しの剣」


「ど、どうする……?」


 俺は狼狽えていた。

 確かに今後、俺の敵に神格が現れることはあり得るだろう。

 しかし、俺は天界と対立する意図はない。


「もらっとけばいいにゃ」


 アリエルは淡々とした口調で言う。


「これから先、神格が敵になることは幾度となく訪れる。その時の切り札に、これはなる。古代人がなにを考えてこれを作ったかはわからないけれど……意匠から、安倍晴明対策かにゃ?」


 アリエルも、何故ここにこの剣があるかはわからないようだ。

 俺は、長剣の柄に触れた。

 その瞬間に、クーポンの世界の俺と、現実世界の俺が、同一化されるのを感じた。

 つまるところ、レベルアップ分の身体能力向上の恩恵の継承。

 もう、クーポンの世界を一々開く必要はない。


 神の意図によって分断されていた二つの自分。

 その壁が早速殺されてしまったわけだ。


 古代人の技術。

 それは、現代人にとっては神のそれと見分けがつかぬものだった。

 その古代人は、どこへ行ってしまったのだろう。


 いや、安倍晴明のような術師も子孫が残っているとは言えどその術式は大幅に弱体化されているように思う。

 空白の期間を感じずにはいられない。


 剣を引き抜く。

 光が溢れた。

 剣は歓喜していた。

 新たな担い手の出現に。

 相応な持ち主の手に渡ったことに。


(お前の目的は……なんだ?)


 俺は複雑な思いで、新たな相棒を眺めていた。



続く

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