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嫉妬の具現化

 その日の早朝、俺は町内会の草野球チームの練習に気も漫ろに参加した。

 今日の本番はこれからにある。


「あの」


「なんにゃ」


「どうしてここに貴女がいるんですか?」


「いたらおかしいかにゃ」


 幸子の問いにアリエルは滑稽そうにケラケラと笑う。


「貴女、岳志君の恋人ですか?」


「そんなゾッとするようなこと言わないでほしいにゃ」


「なら、なんでつきまとうんです。ど、同棲未遂とか」


 なんか女の戦いが勃発してる……。


「幸子さん。今日はこの後の用事にアリエルが必要なんだ。悪いけど、堪えてほしい」


「わかりました」


 幸子はしゅんとして、項垂れた。

 練習が終わると、グラウンドを後にする。


 今日も野球部の朝練部隊がやってきた。

 と言っても、この朝練部隊は野球部全体のごく一部。

 グラウンドを均したり練習環境を先に来て整える一年坊だ。


 俺は、相手がなにかを言う前に金色のクーポンをタッチした。

 白い空間に、俺達は移動していた。


「なんだ? ここ!」


「グラウンドはどこに行ったんだ!」


 混乱の声が上がる。

 そして、それらの視線が一点に集まり、悲鳴へと変わった。

 彼らは蜘蛛の子を散らすように逃げていき、残ったのは一人になった。


(ああ――お前だったのか)


 一緒に野球部を変えようと誓いあった彼。

 二軍のレギュラーで、紅白戦で骨折し、俺が野球部を辞めようと思った原因となった彼。

 最後まで俺の味方だと思っていた彼。

 彼が元凶だったとは。


 彼の影からは、ドラゴンが浮かび上がっていた。


「嫉妬の具現化、ドラゴン」


 アリエルが淡々とした口調で言う。


「ちょっと荷が重い相手にゃよ? 岳志の得意とする炎系スキルも通じないし」


 俺は微笑む。


「経験値が美味しいってことか?」


 アリエルは苦笑する。


「行ってらっしゃい」


「行ってきます」


 俺は駆け出していた。




続く

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