隠してても臭うわよ
「良くぞやってくれた、岳志君。君の活躍がなければこの洞窟は眠りについたままだっただろう」
そう言って、老人は杖をついて歩いていく。
それを、俺は唖然として見送った。
老人の前に、アリエルが立ち塞がった。
「隠してても臭うわよ」
鋭い声で言う。
老人が微笑む。
「ほほほ。なんのことかな」
「貴方、天使ね」
緊張がその場に走る。
「僅かに神性すら感じる。上位クラスの上澄みの天使」
「……退いてはくれんかな」
「貴方なら、なにを企んでるかわからない奴を、なにがあるかもわからない洞窟に素直に通すと思う?」
老人はにかっと笑った。
「通さんの」
その瞬間、老人の放つ気配が変わった。
圧倒的な神聖な気配が周囲に放たれる。
暴風が吹き、周辺の物を圧迫する。
老人だった者は、若々しい金髪の青年となり、白い法衣に身を包み、宙に浮いていた。
手には、杖がある。
「私の得意とするのは術! あの古神像とは相性が悪くてほとほと手を焼いていたところよ。お前達なら我が力で圧倒できるだろう」
そう言った瞬間、周囲に炎の嵐が吹き荒れる。
無防備だった俺と刹那はひとたまりもない。
と思いきや、見えない防壁が身を守ってくれた。
エイミーが防壁を張ってくれたらしかった。
しかし、暑い。
サウナでもここまで暑くはないだろう。
汗が吹き出てきた。
「エイミー! 防壁を維持できるか!」
「できるよ。爺ちゃんにならった初歩も初歩だ!」
「なら、維持しててくれ!」
俺はクーポンの世界を展開すると同時に、刹那と共に天使に向かって接近した。
縮地を使う俺の方が速い。
槍が俺の短剣を防ぐ。
「鉄破孔!」
刹那の肘が相手の腹部に突き刺さる。
しかし、爆発は体内で相殺されたらしい。
「赤乱華!」
コンボに繋がる。
心の臓への螺旋の一撃。
術使いにはやはり体術が効く。
天使は後方へ吹き飛んで、血を吐いた。
そこに、縮地。
一瞬で俺は、相手の首を断った。
さしもの相手も、神性クラスと評される俺と、半神の子孫である刹那と、模造神のエイミーの連携の前には屈したというわけだ。
俺はクーポンの世界を解除する。
天使はさらさらと砂となって消えていく。
「この先に、あいつが求めていたものがあるのか……」
そう呟いて、先を見る。
洞窟の中の広い空間の先に、再び小さな洞窟。
その先に、仄かな光源があるのが見えた。
人造の光ではないだろう。
人造の光ならば、長い年月の間に力を失ってしまっているはずだ。
それは、自ら光を放っているらしかった。
続く




