模造神エイミー
エイミーは京都駅の前に立っていた。
はてな? と思う。
さっきまでテレビ局の待機室にいたはずなのだが。
最近あまりにもがんじがらめにされて夢の中で冒険心が爆発しているのだろうか、と思う。
黒いスーツの女性達がやって来て、エイミーを取り囲む。
「エイミー・キャロライン様、こちらへ」
そう言って、エイミーを囲んで歩き出す。
(夢……じゃないのかなあ)
そんなことをぼんやりと思う。
あまりにも現実味がなさ過ぎる。
東京、京都間の移動が一瞬すぎて、それこそ夢としか思えない。
エレベーターの扉が開くと、そこは水面のようになっていた。
「中へ」
女性の一人がそう言って中へと進む。
(やっぱ夢かなぁ……)
そう思いながら、エイミーは水面の中へと入った。
景色が一変した。
広い図書館のような場所だ。
女性達は歩き、大きな扉の前へとエイミーを案内する。
そして、エイミーはその中へ入ることを促された。
重々しい扉を開き、中に入る。
中央に白い顎髭を生やした老人。右側に老齢の男性がいた。
「これはエイミー・キャロライン。およびだてして申し訳なかった。何分急いでいたものでのう」
「……変に現実感がある夢だなあ。変だなあ」
肌の感覚。柔らかい絨毯を踏む感触。それらはまるで現実のもののようだ。
老人は苦笑する。
「夢ではない。今回は模造神であるお主の力を借りたくてここに呼んだ次第」
「模造神……? あー、タワーマンションを半壊させたあれね。残念だけどエイミーにはあんな力もうぜんっぜん残ってないよ」
「力は戻りつつある。もう全盛期の八割ほどは戻っているのではないかな。それはなにかのきっかけで溢れ出す」
不吉な予言だった。
前回は、制御出来ずに悪人に利用され、沢山の人に迷惑をかけた。
今回もそうならないとは限らない。
そこで納得した。
なるほど、東京、京都間の一瞬での移動も、この夢のような空間も、岳志絡みの人間達の仕業か。
そうと考えると、これは夢ではないのだと、意識がはっきりとした。
「どうすれば、力を制御できますか」
エイミーは、縋るように言う。
「簡単なコツを教えよう。そして属性別の術法のコツも。こちらも時間がない。一刻も早く主に協力してほしい案件がある。模造神エイミーよ、そなたの力を借りたい」
「模造神……」
模造神。紛い物の、造られた神。
しかし、なんだろうと力を持っていることに変わりはない。
「それは多分、岳志の力なることにも、京都の人の安息に繋がることにもなるんでしょうね」
白髭の老人は優しく微笑んだ。
「ああ、約束する」
「なら、お願いします。私に、力の使い方のコツを教えて下さい」
「そう畏まらなくても良い。いざという時は儂も共に出よう。まずは簡単な力の使い方から駆け引きまで……模擬戦用の空間でも作るとしよう」
そう言って老人は、指を振った。
エイミーは息を呑んで、流れに身を委ねた。
続く




