天使二体
俺はどこまでも広がる白い空間で天使と戦っていた。
天使は剣を構えて俺を待ち受ける。
それを俺は、退魔の双刀を持って襲いかかる。
弾かれる、弾かれる、弾かれる。
急所への正確な高速連撃。それが通じない。
「正確、それ故に読みやすい」
天使はそう言って微笑んだ。
(くそ、こいつ、ヒョウンクラスだ)
レベルアップで相当跳ね上がった俺の身体能力だが、技量差を覆すまでには至っていないようだった。
シュリアルとアリエルは魔術合戦の真っ最中だ。
氷と炎が入り交じる戦場で青と赤が乱反射している。
「気にならない? 黒幕の正体。私なら言える。私なら語れる。それは貴女の姉の仇と言えるでしょう」
シュリアルは囁く。天使なのにそれはまるで悪魔の囁きだ。
しかし、アリエルは全開の魔力で応じる。
シュリアルの前髪が焦げた。
シュリアルの表情がとたんに不機嫌になる。
「集中しきっているようね、それはそれで、結構だけれども。私も一筋縄ではいかないわよ?」
その台詞通り、神格を持つアリエルにシュリアルは対等に渡り合っている。
戦線は完全に膠着状態に陥りつつあった。
「じゃあ、ここで貴方達が動揺する情報を開示してあげましょう」
シュリアルは手を叩いてそう囁いた。
「安倍晴明の封印の結界。その第一段階は解けたわ」
緊張がその場に走った。
俺も、アリエルも、唖然としている。
「今頃、六大当主は安倍晴明の幻影と戦っている頃でしょう」
動揺を誘ったのだろうが、これは逆効果に働いた。
刹那が危ない。
こんな時こそ冷静になれ。
戦いの経験値が、俺の中から焦りを奪った。
代わりに、俺はゾーンに入った。
相手の動きが、なんとなく読める。
次に取るべき行動が、言葉で説明できなくとも、体で理解できる。
勝てる。そう思った。
(待ってろ、刹那。今行く! だから、生きてろ!)
俺は眼の前の敵に向かって、一心不乱に駆け出した。
続く




