動揺するアリエル
「く……黒幕?」
アリエルは明らかに動揺している。
目はまん丸に開かれ、棒立ちになり、隙だらけだ。
「アリエル!」
俺は思わず怒鳴る。
もういつ戦闘が始まるかわからないのだ。
アリエルは我に返ったように戦闘態勢に移ると、呼吸を整えた。
そして、真っ直ぐに前を見る。
「あら、思ったより効かなかったかしら。けど、事実よ。私、シュリアルとエリセルを唆した神は確かにいる。彼が天界大戦の首謀者であり、黒幕である」
アリエルは答えない。
ただ、真顔で前を見ている。
「天界大戦の雄、アリエル、その首もらった!」
氷の精霊と風の精霊がそれぞれの属性の刃を放ちアリエルに接近する。
「フレイム、ヴォルケイノ!」
アリエルは唱える。
敵全体が炎に包まれる。
一瞬で氷の精霊と風の精霊は蒸発した。
しかし、二体の天使は健在だ。
シュリアルと言ったか。
敵のボス格はしたり顔だ。
「天界大戦でくらったあんたの炎はこんなもんじゃなかったわねえ」
アリエルは苦い顔だ。
「効いてるようじゃないの」
そう言ったシュリアルの周囲に、氷の槍が幾百も現れる。
それは一斉にアリエルに向かって放たれた。
アリエルの周囲に炎のオーラが現れる。
もう一体の天使が手をかざす。
炎のオーラが、氷のオーラによってかき消される。
アリエルの目がまん丸に見開かれた。
俺は両者の間に入ると、氷の槍を召喚して、高速回転させた。
投擲された槍が粉々に砕け散っていく。
「ほう。私の槍を砕くかい。やるねえ」
シュリアルは拍手する。
「なに寝ぼけてやがる、アリエル。横に避けりゃいいだけの話だろうが!」
「わ、悪いにゃ、岳志……頭がぐるぐるしてるにゃ……」
「今は一旦余計な情報は横に置け! 俺達の肩に何人の平和がかかってると思ってやがる!」
京都に来て、色々な人を見てきた。観光客。学生。住民。陰陽連の人々。六大名家の当主達。
皆、今を生きていた。
皆、平和を求めていた。
その全てが、俺達の肩にかかっている。
乾いた音が周囲に響き渡った。
アリエルが自分の頬を張った音だ。
「目が覚めたにゃ」
アリエルは炎の球を二つ呼び出し、自分の周囲を旋回させる。
「ここからは私も全開で行くにゃ」
「ああ。俺も全力を尽くす。行くぞ、アリエル!」
「うん、頼むにゃ!」
本格的に、戦闘が始まろうとしていた。
続く




