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六大名家

「軟式王子じゃーん」


 そう言って出迎えてくれたのは黒髪ロングのお姉様だった。

 歳の頃は先輩と同じぐらいだろうか。


「一階堂あかねだ。六大名家の当主の一人だ」


 周囲は学生が多い。

 通学バスが停まる駅前で、あかねは指を交差させ何やら上下させている。


「ああやって悪霊の卵を浄化している。かなりのやり手だ」


「あの一動作ごとにか?」


「ああ」


「ってことはそれだけ卵があるわけか」


「そういうことになる」


 与一は肩を竦める。


「学生なんてくだんないことで悩むからねー。学校なんて枠取っ払っちゃえばいいのにさ。まあ待ってるのは社会って枠なんだけどね」


 あかねは達観したように言う。


「あかね。岳志君を陰陽連に案内したい。同意してはくれないだろうか」


「うーん」


 あかねはまた手を上下させる。


「軟式野球大会決勝戦のチケット一枚」


「なんとかなると思う」


「じゃ、認める」


 軽すぎやしないだろうか。

 クールな外見と違ってあまりにも俗物だった。


 その次に引き合わされたのは三階堂陸だ。

 驚くことに、ラブホテルの受付をしていた。


「三人でお泊りで?」


 陸は頬杖をつきながらとぼけた調子で言う。


「冗談はよせ、陸」


「あのー……ラブホテルの受付が名家の当主?」


「よく釣れるんだぜー悪霊つき。心を病んだ人間がよく来る。しかも深くな。それなりの熟練者が必要というわけだ」


 陸はやれやれと言った調子で言う。


「まあ与一はロリコンじゃないだろうし興味もなかろ。なんの用だ」


 与一は一瞬ぐっとつまったが、次の瞬間には平素の表情に戻っていた。


「岳志君を陰陽連に案内したい」


 陸はしばし押し黙った。


「責任は持てるのか、二階堂と四階堂の」


「岳志君のことなら私達が保証するよ」


「そいつは天界人関係者だぞ。安倍晴明も元はと言えば天界人関係者だ」


「そして俺達はその子孫だ」


「今やその血も薄いがな」


 そう言って陸は肩を竦める。


「お客さんはお客さんとして帰ってもらうべきじゃないかと思うけどな、俺は」


「どうも、俺達の中に内通者がいる」


 与一の言葉に、陸は押し黙った。


「確かか?」


「確かだ」


「なら、怪しいのは六階道だろうな」


 そう、陸は言った。


「良いだろう。そういうことなら調査でもなんでもやらしてやればいい。満足するまでやればいいさ。六階道は昔から俺も気に入らなかったところだ」


 私怨とはいえ同意してくれるならありがたいものだった。

 しかし、同じ当主からこれほど毛嫌いされる六階道とは一体どんな人物なのだろうか。

 一度、与一に訊いてみる必要がありそうだった。



続く


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