狙われている?
与一の岳志への印象は、知名度に鼻を駆けない好青年といったものだった。
偉ぶることはなく、身の程を弁え、年長者を立てる。
好印象を持ったと言って良い。
それが少し風向きが変わったのは、紗理奈の言葉があってからだった。
「やーっぱこの体じゃ駄目なのかなあ。ファーストキスあげたのにさ」
そう、さらりと紗理奈は言った。
与一の心に隙間ができた瞬間だった。
ただ、紗理奈は岳志が好きなのだと納得した。
その時から、なんとなく与一は二人を一緒にさせてやろうと行動するようになった。
心に隙間風を感じながら。
そこを、見事に敵に付け入られた。
+++
「敵は……俺達のことを見張っている」
クーポンの世界から戻った与一は、正気に戻るなりそう呟いた。
「俺の心に隙間が出来てそう経っていない。その瞬間に悪霊の卵だ。監視されていたとしか思いようがない。これは、岳志君達が京都入りしてから監視されていたと考えるのが自然ではないだろうか」
そう語る与一は少し気まずげだった。
紗理奈は少し考えた後、言う。
「単独行動をしているアリエルさんが危ないわね」
「そうなるな」
与一も頷く。
「戦力を分けましょう」
紗理奈は言う。
「岳志はエイミーを護衛して新幹線に送り届けて。私達はアリエルさんが無事か確認しに行くわ。クーポンの能力があれば万が一があっても避難はできると思う」
「わかった」
俺は頷いていた。
しかし、引っかかる。
与一は、俺のなにが邪魔だったんだろう。
紗理奈だってそれは気になるところだろう。
しかしそれは、聞きづらいデリケートな問題だった。
「ごめんね、大変なところに来ちゃって」
エイミーが申し訳無さげに言う。
「いや、こっちこそ巻き込んでごめんな。今度は、普通に遊ぼう」
そう言って、俺はエイミーの帽子をかぶった頭を撫でる。
エイミーはくすぐったげに苦笑すると、サングラスの位置を整えた。
「じゃあ合流地点は京都タワー。敵との戦闘はできるだけ避けて」
「了解」
紗理奈の言葉に、俺と与一の言葉が重なった。
続く




