女神の加護
タワーマンションに向かって駆けていく。
この瞬間にも、タワーマンションには炎の嵐が巻き荒れ、周囲を煌々と照らしている。
「エイミーがやっているのか……?」
信じられない。
優しく明るいエイミーの所業とは信じられない。
「神の因子を注入された時点でエイミーの人格は飛んでいるにゃ。あれはもう、エイミーでは……」
アリエルは言い辛そうに言う。
その時、世界が白い光に包まれた。
俺は、いつの間にか決闘のクーポンの世界に足を踏み入れていた。
深刻な表情で、女神が目の前に浮いている。
「大変な事態になりましたね」
女神は言う。
俺は、黙って頷く。
「これは堕天使の所業。人間の所業ではありません。私の力を貸しましょう」
俺は目を見開く。願ったりかなったりだ。
「お願いがある」
俺の言葉に、女神は戸惑うように目をぱちくりとさせた。
「最初は防御に徹して、エイミーを説得する時間を貰えないだろうか」
女神は気まずげに視線を逸らす。
「エイミーの人格は、もう……」
「それで諦められるほど、俺とエイミーの仲は安くない」
俺はじっと女神の目を見る。女神はそれを受け止めた。
十秒程の沈黙の後、女神は溜息を吐いた。
「わかりました。元は天界の不祥事。今回は貴方の我儘を聞き入れましょう」
「恩に着る」
エイミーを元に戻して見せる。
絶対に。
続く




