敵の判明
「陰陽連の調査の結果」
俺の部屋で、電話口で涼子の言葉の続きを待つ。
「岳志君が入手した画像と折笠という人物の写真は同一的ではないことがわかりました」
「同一的では、ない……?」
俺は足元がガラガラと崩れ落ちるような錯覚に襲われる。
それはつまり、今この瞬間も、不審人物がエイミーの傍にいるということだ。
「つまり、今折笠を騙っている人間は真っ赤な偽物。まともな人間じゃないってことよ」
「……天使崩れの可能性が高まったってわけか」
「もう一度呼び出して、三人で袋叩きにしてやりましょう」
「……そうだな。相手には六華の書類を渡してある。返事のフェイズが必要なはずだ。連絡はまた、する」
そう言って俺は、返事も聞かずに電話を切った。
「岳志にしては中々悠長にゃね」
アリエルがクッキングパパを見ながら淡々とした口調で言う。
「急いでもしょうがないだろう?」
「本音は?」
俺は渋い顔で黙り込んだが、苦笑する。
隠し事は出来ないな、この駄猫には。
「エイミーには、どっちが幸せなんだろうなって」
「……今の状況は相当危ないにゃよ?」
「けど、それは杞憂で、敏腕マネージャーの下で仕事を荒稼ぎ出来ているかもしれない。ついにはゴールデンタイムのバラエティ番組だ。俺には同じことをエイミーにはしてやれない」
俺はまだまだ子供だ。
芸能界にコネも無ければ人脈もない。
エイミーのマネージャーみたいなこと、出来ない。
「なら、このままエイミーがなにかに利用されてもいいにゃ?」
「そうは言ってない」
「そう言ってるようなものにゃ」
俺は押し黙る。
確かに言われてみれば、事態はそれほど緊迫したものなのかもしれない。
「エイミーの幸せを思うなら」
アリエルは淡々とした口調で言う。
「呪縛から解き放ってやりなよ、ヒーロー。元天使。相当強敵にゃよ」
「……わかった」
俺は戦う。
エイミーから、なにかを奪うことになっても。
エイミーを、守るために。
決戦の日は、刻一刻と近づきつつあった。
折笠から、書類を返すという連絡があった。
奇しくも、エイミーのゴールデンタイムのバラエティ番組初デビューの日だった。
続く




