陰陽師
「それは陰陽師にゃね」
俺の話を聞いて、アリエルが発した第一声がそれだった。
「陰陽師?」
小説や映画でしか聞かない単語だ。
「実在するっていうのか? その、陰陽師ってのが」
「天界大戦みたいなことがなくても、平時にも悪霊はいるにゃよ。今回みたいな人間だけの手に負えないと思われるケースには天界も陰ながら介入するけれど、平時はその陰陽師に任せきりにゃ。しかし、やはり大々的にニュースになると嗅ぎつけられちゃうにゃね」
アリエルはそう言って物憂げに窓の外を眺めた。
「まずかったか?」
「むしろ、協力関係を築けたほうがありがたい」
意外な言葉だった。天界の介入は秘匿しろと言われると思っていたからだ。
「エクソシスト、陰陽師、色々いるにゃけど、この世界をカバーするには岳志一人には手に余りすぎるにゃ。私の下位精霊の助力も得られるとは言えそれも限界がある。組織があるなら使わない手はない」
「なら、天界のことを話しても良いってことか?」
「それは困るにゃ」
「禅問答みたいなことを……」
俺は思わず頭を抱える。
「天界大戦って単語を引き出されただけでもかなりグレーゾーンにゃよ」
「そうなると、俺はこれからどう立ち回れば良い?」
「そうにゃねー」
アリエルは人差し指を顎に当てて考え込んだ。
「とぼけつつ、上手く利用する。立ち回りが寛容にゃ」
こいつに癒やしを感じた俺が間違いだった。そう確信した一瞬だった。
しかし、どうしたものだろう。
次に涼子とシフトが一緒になるのは三日後。木下にでも交代してもらおうかと思っていたのだが。
どうやら、直接対決ということになりそうだった。
続く