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9 テイルザール王国

*テイルザール王城、国王執務室*

(テイルザール国王視点)



「色持ち能無しのダンビュライト令嬢か…」

「どうしますか?」

「受け入れるしかないだろう。優先的に魔石を手に入れる事が出来たし、何より…これ以上力で物を言わせるとアーノルドが黙っていないだろうからな」


グレスタン公国から側妃と言う名の人質を要求してやって来るのは、治癒師の名家であるダンビュライト家の令嬢だったが─それが無能と呼ばれる者だった。


その者がどうなろうと、グレスタン公国としてもダンビュライト家にとっても痛くも痒くもないと言う事だ。侮られたものだと思わなくもない。輿入れしたその日に首を落とし、そのまま送り返してやっても構わない。ただ─



『これ以上、人間(ひと)族と揉め事を起こすな。次に勝手に何かをすれば、私も黙ってはいないからな』



俺がグレスタン公国を攻め込んだ後、直ぐにやって来たのは同じ獣人族でウィンスタン王国の国王であるアーノルドだった。アーノルドは鷹の獣人で、獣人族の中でも他種族とも中立的な立場に居る。俺はライオンの獣人で、獣人族の中でも一番の力を持っているが、実際は、本気になったアーノルドには────


「兎に角、その令嬢を厚遇するつもりはないが、手を出す事はしないように伝えておけ。部屋は…一番奥で良いだろう。()()()()()()()をしておけば良い」

「承知しました」


どんな女なのかは分からないが、俺に迷惑さえ掛けなければ生かしてやるだけだ。人質として大人しくしておけば良いだけだ。








******



グレスタンからテイルザールへの移動の馬車内で、アルマさんがテイルザール王国や獣人について色々教えてくれた。


「テイルザール国王には、王妃とは別に9人の側妃が居て、王妃の子が既に立太子していて、側妃との子は全員で3人らしいわ」

「9人………と言う事は、私は10人目の側妃って事?それなりの妃が居て、子供は少ないんですね」


子供が少ないのには、理由があるそうだ。

獣人は、種族違いで結婚した場合、夫婦間で力の差が大きければ大きい程子供が出来難くなるそうだ。テイルザール国王はライオンで力が大きいそうで、同じライオンの王妃は結婚して間もなく子供が授かったけど、側妃達はライオンよりも力の弱い種族らしく、子供もできにくいそうだ。ある意味、跡目争いが起こりにくくて良かったと言うところかもしれない。

ならば、人間族の私に子供が出来る可能性は殆ど無いのかもしれない。正直、これは嬉しい事だ。できれば、()()()()()も無ければ良いけど……。そもそも、無能な私を送り込んで来た!と怒って殺されるとか………


ーそれならそれで…良いのかもしれないー


「力が弱いと言っても、9人の側妃達も獣人だから、人間族のレイが一番弱いって事ね。あ、因みに、人間族では18歳からが成人扱いだけど、獣人族では16歳から成人扱いになるわ。まぁ、人間族でも、高位貴族は16歳から成人扱いされている事の方が多いけど」


平民では18歳から成人扱いだけど、公爵、侯爵や伯爵家ともなると16歳で社交界デビューする事もある。私は16歳だけど、ダンビュライト公爵令嬢として成人と見做され、今回問題無くテイルザール王国への輿入れが決まったんだろう。輿入れと言うより、人質としての意味合いが大きいと言う事もあるだろうけど。

いつか、私もお姉様の様に恋をして婚約者ができて、お父様達みたいに仲の良い夫婦になれるかな─なんて思っていた時もあったけど。それは、夢のまた夢の話になった。


「私も、それ程の情報は持ってないけど、何か気になる事とか訊きたい事はある?」

「そう言えば、アルマさんって、何の獣人なんですか?」


アルマさんの獣化した姿どころか、獣人だった事さえ誰も気付かなかった。


「私は兎です」

「兎!!可愛い!」

「ふふっ…ありがとう。情報収集は得意だから、その辺は任せてね!」


そうして、辛くなるはずの道中は、アルマさんのお陰で少し楽しいものになった。






それから船に乗り換え大陸に向かい、そこからまた寝泊まりを繰り返しながら馬車に揺られて1週間。ようやくテイルザール王国に辿り着いた。


入国してから更に2日程馬車に揺られて、ようやく首都に入ったのがお昼過ぎで、王城に着いたのは夕方だった。





「長旅、ご苦労様でした。先ずはお部屋へと案内します」


私達を出迎えてくれたのは、少数の騎士とテイルザール王国の宰相だけだった。

人質としての出迎えと考えれば、悪い扱いではないのかもしれない。


取り敢えず、今日は王城の客室で食事をとりゆっくり過ごし、国王とは明日謁見する事となった。



部屋に運ばれて来た食事を、同じ机に並べてアルマさんと向かい合って座って一緒に食べる事にした。


「これからは、主従関係になるから、レイは私には敬語無しで、私は“レイ様”と呼びますね」

「分かりま─分かったわ」


過激派と言われているテイルザール国王はどんな人なのか。謁見後も無事に生きていられるのか。色んな不安はあったけど、それらは全て頭の中から追いやって一晩を過ごした。






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